第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
「まずは過去10年分の
殉職したヒーローのリストを見たいんです。
ヴィランのリストも同時に。」
「どうしたんだい急に?」
「ヒーロー殺しステインについて
少し…気になることがありまして。」
「そうか…
それならばこの棚だよ。」
詳しい理由も聞かないまま
塚内さんはその場所へと案内してくれた。
浮かぶ皮肉は
可愛げのないものだ。
(あっさりとしすぎてる。)
ニコニコと人の良い笑みで
棚を指さす塚内さんに呆れてる訳じゃない。
これは罪悪感。
自分の立場を利用して
欲しい情報を得ようとしている事への…。
わかってるの
これは捜査協力への報酬ってだけじゃない。
私自身への信用って訳じゃない。
警視の娘
希少な“個性”
雄英の秘蔵っ子
それらの肩書の上に成り立つ信用だ。
「では、ドアの外で見張り番でもしておくよ。」
「そんな、見張りだなんて…。」
ハハハと頭を掻きながら笑う
塚内さんは口には出さないけれど
一般市民
ましてや学生を
こんな個人情報の巣窟に入れるなんて事
許される訳がないもの。
(せめて皆の顔を
潰さないようにしなきゃ…)
調べものは手早く
だけど慎重に
よしと意気込んで
一つ目のファイルの背表紙に指を掛けた。
(やっぱり最近はヒーロー殺しの被害者が多いな…。)
簡単に言ってしまえば思想犯。
私利私欲に走るヒーローを
偽物とみなして現在粛清中って訳だ。
(成程、一理ある…)
今やヒーローは国家公務員。
人気が故
芸能活動を兼業するヒーローだって多い。
その上ヒーロー番付なんて
数字を振られてしまえば
誰だって上を目指したくもなる。
人の為ではなく
自分の為
そんなヒーロー社会に嫌気がさした、か。
あまりに極端な思想だ。
脅迫概念とも言える強い思想。
けれど…
(わからないでもない…な。)
そう、思ってしまった。