第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
強く、深く
大きな釘を何本も刺されてしまった。
「約束してしまった。
しかも一週間分…。」
暗転したスマホ画面に映る私の顔は
膨れっ面だ。
だってそうでしょう?
そもそも今回の職場体験
ヒーロー殺しについて調べられると思って承諾したんだから…。
今一番知名度の高いヴィランだと言って良い。
ヒーロー志望として
気になるのは当然。
飯田くんの為とか
飯田くんのお兄さんの為とか
患者さんの為とか
決してそんな、そんなんじゃない
決して!
決して!!
「なら、良いかな…?」
約束の抜け穴を必死で探す。
患者さん
もとい、飯田くん達の為じゃなきゃいい
ヒーロー殺しと遭遇しなければいい
ちょっと卑怯だけど
つまりはそういう事。
「うん、調べるのは大丈夫だ。」
だって気になってしょうがない。
ヴィラン連合のあと一人の存在
まさかとは思うけど
それがヒーロー殺し、だったりしたら…?
彼に賛同するヴィランなら多そうだ。
「いやー…でもなー…。
それは安直すぎる…気が…。」
世間一般のイメージからして
ヒーロー殺しは群れるってイメージじゃない。
だから
やっぱり調べてみないと!
ヴィラン連合を統括しているであろう人物
それが皆目見当もつかない今は
可能性のあるヴィランから潰していくしかない。
ヴィラン連合に繋がれば儲けもの
その体でしらみつぶしに当たっていこう。
その最初がヒーロー殺しってだけ
ただ、それだけ…。
「よし、大丈夫!」
約束は破ってない、と
内線電話に手を伸ばす。
時間は待ってくれない
この感じじゃ今日も
死んだように眠ってしまうんだろう。
そんな自分に苦笑を零しながら
ボタンを押した。
「すみません、塚内さん…。
資料庫に行きたいんですが――……」
許可を取り
目的の場所に向かう為、荷物を纏める。
まさかこんな思考回路まで
見越されているなんて夢にも思わない私は
意気揚々とドアノブに手をかけ
部屋を後にした。