第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
『前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる。』
過ぎった台詞は昨日のモン
未だクソとしか思ってねぇ親父のモン
ハイリに言ったとおり
現在No2ヒーローは
ヒーロー殺しを検挙すべく
とっくに手はずを整えている。
『しばし保須に出張し活動する!!
市に連絡しろぉ!!』
どんだけクズでも
検挙率だけで言えば史上最多の男だ
認めたくねぇが認めざるを得ねぇ
No2と言われるだけの判断力と勘の良さ…。
保須市に再びヒーロー殺しが現れる可能性は
低くねぇだろう。
(懸念していた事が起っちまった…。)
東京都保須市
俺の現在地は
ハイリの居る警視庁とさほど遠くはねぇ。
何もなきゃ浮つけるこの状況
こうなっちまったからには
俺がこっちに来ている事は伏せた方が賢明。
(気取られる訳にはいかねぇ。)
無闇に外出させて遭遇でもしたらどうする?
向こうが構わずとも
ハイリが何仕出かすかわからねぇ。
「ハイリ…?
返事はどうした?」
『わかりました…。』
気の乗らない返事にゃ不安しか残らねぇ
スマホを耳に当てたまま
頭は天井を向いた
何度目か
もうわからねぇ息を吐く
(こりゃ調べるのは止めそうにねぇな…。)
ハイリなら
親父と同じ答えに辿り着くまで
そう時間はかからねぇだろう。
ならば
動かねぇよう釘挿すしかねぇか。
少し卑怯だが…。
「今日の約束だ、
ヒーロー殺しに遭遇するような行動はとるな。
遭遇しても手を出すな。」
『一個が長い!
ってかそれもう二個じゃない!!』
「じゃあ向こう一週間分の約束だ。」
『んなぁぁっっ!?』
反論まで駄々洩れか
少しは隠せ
捜査する気満々じゃねぇか…。
完璧にむくれた声が
俺の頭を重くする。
ハイリの反論に
頭を支えるように手を添えた。
だが…
この約束に弱いハイリはなんとか折れてくれたみてぇだ。
『……言っとくけど焦凍もだからね?
そっちは私と違ってヒーロー活動なんだから…。』
「わかってる。」
はっきりと交わした約束だった。
俺自身から持ち掛けた約束だった。
まさかこの約束を言い出した俺が
舌の根も乾かぬうちに破ることになるなんざ
この時は
想像する事すら出来なかった。