第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
ヴィラン連合の主犯
死柄木と言う男を私は目にしてないけれど
聞く限りまるで子供。
遊びたいと駄々をこね
負けそうになったら放り出す
そんな子供
稚拙な言動
幼稚な思考
露骨な態度
そんな子供に賛同する――…?
(やっぱり無理がある。)
路地裏でたむろするような
はみ出し者ならまだわかる
だけどこの人物は別。
もっと技術を生かせる場所があるはずだ。
乗っ取ろうとしているか
もしくは賛同できる程の相手がいるのか…。
「たぶん、後者だな…。」
脳無は恐らく
一人で造り上げられたものじゃない
合作だ。
つまり―――…
一つの結論に
ピクリ、唇が動いた。
動かしたじゃなくて動いた
そんな感じだった
「もう一人、居る…。」
死柄木よりも大きな存在がもう一人…。
だとしたら
そうだとしたらそれは
どんな人物なんだろうか?
力を持て余した
アダルトチルドレンを懐柔し
知のある医科学者まで味方に付ける
ゾクと背が粟立った
夏だというのに身震いする。
「どう、しよう…。」
自分で出しておきながら
目を瞑りたくなる結論だ。
どう動くべきかと腕を組む
見れば時計の針は
二つとも右を向いていた。
カチコチ
カチコチ
カチコチ
キーボードの代わりに時計が刻む
規則的なリズム
決して崩れる事の無い音の中で
これを大人に伝えるべきか
ずっと腕を組んだまま考えた。
もし事実なら
取る対策も用いる人数も
きっと変わってくる
言うなら早いに越したことは無い。
かと言って
下手な推察は捜査を撹乱しかねない。
良くも悪くも私の発言は
それなりに影響を与えてしまうのだ。
「まだ、だな…。」
もう少し
確証を持ってからじゃないと…。
問われたならばともかく
自分から乱しに行くわけにはいかない。
私はまだ
責任を取れる立場でもないんだから。
「少し、調べてみなきゃ…。」
言うのは
もう少し確証を持ってから
一つ息を吸い
大きく吐く
徐に上げた手で
エクセルを消し
ネットを立ち上げた。
資料は後で絶対
資料は後で絶対と
念仏のように呟きながら。
時計の針が
悲しそうに二本揃って下を向く
職場体験1日目
結局この日
私は誰とも通話をする事は出来なかった。