第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
温度の無い音だけが一定のリズムで響く部屋の中
視界にモニターを映してはいても
もう、字なんて映ってはいなかった
動いているのは指だけ
その指は響かせているだけ
カタカタ
カタカタ
カタカタ
カタタ…タ、、、
「…………あ"。」
突如乱れたリズムに
定まっていなかった焦点が定まった。
乱した指が
もつれたようにキートップを弾いて
――カタンッ
また一つ響いた
大きな固い音
見れば画面は
白をバックに連なる黒の羅列。
それはもはや意味なんて連ねておらず
踊りに踊りまくっている。
暗号にすらなっていない。
「こんなに打ち間違いしてた…。」
打ち間違いなんて
いつぶりだろう
ブラインドタッチしながら
ここまでなっても気付かないなんて
よっぽどだ。
それってつまり
そういうことで
「ああああ、集中力が全く無いよーー。」
ソファーの背もたれに
体を埋めながら独り言ちた。
抱える頭は
かなり重い。
こんなんじゃ今日中に終わるどころか
資料一枚とて仕上がらない。
なんかさっきから私
独り言ばっかりだし
(……って当然だ、一人なんだから!)
唐突に襲ってくる虚しさに
口が勝手に名前を呼ぶ
「助けて焦凍…。」
私今
なんだかものすごく
貴方に会いたいです。
PCを放りだしてスマホを掴む
【私は会いたいよ…】
とりあえず
返信だけ
今の胸の内を
正直に送ってみた。
「…………よし!」
勿論彼だって職場体験中だ。
返事なんて返って来るはずがない
それでも一つ掃けると不思議な事にスッキリする。
用の無くなったスマホを放り
冷えてしまったコーヒーを一口
今の頭を整理するには
必要な事だ。
こんなんじゃ午後の時間
全てを費やしても纏め終わらないもの。
ならばどうする?
簡単だ。
こうなったら
とことん考えてしまおう
私が飽きるまで。
だって
気になってしょうがないんだ
一つの疑問が頭から離れてくれない。
今日の診察を経て
浮かび上がった一つの疑問。
私の行動を縛っている
これまた突飛な疑問
(ヴィラン連合って
本当にただの烏合の衆なのかな?)
きっと口にしたら
また呆れられるに違いないヤツだ。