第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
「さーて、と。
診断結果をファイリングしておこうかな…。」
頭を切り替えよう
今はやるべきことがある。
ノートPCを広げたその手で
コーヒーの入ったマグカップを手に取った。
休むように言ってはくれたけれど
これを作ってしまわないと
私がここに来た意味がない。
与えられたからにはちゃんとやる
例えヒーロー活動と関係のない仕事でも…
そこまで考えて
キーボードを叩き始めた指を
フ、と止めた。
(関係、無くはないか…。)
あの脳無と呼ばれる男は
雄英の教師に
プロヒーローにあれだけの深手を負わせたんだ。
関係ないどころか大アリ
私自身
あの日の衝撃を未だに忘れられないんだから…。
「はぁ…。」
誰もいない空間には
溜息が大きく響くものだ。
誰もいないんだもん
遠慮なく吐ける
溜め息だって
独り言だって…
「切り替えると言った側から
また考えちゃってるよ…。」
一度気になり始めたら
解決するまで止まらない。
消太くんやちよちゃんから
注意されただけじゃない。
焦凍にまでつっこまれた。
「昔からの
私の悪い癖だ……。」
視線は
光を遮られた窓へと向いた
白いブラインドに映すのは
あのどこを見ているともわからない
生気のない目だ。
複数の“個性”を持った怪人 脳無
気付いた時点では
生まれ持ったものだと思ってた。
だからこんな改造の被検体にされたんだと
だけど
(違った……。)
今日診た感じ
投与された薬はそんな次元じゃなかった
バラバラの身体を
無理矢理くっつけているどころじゃない。
各々の原型が無くなるまで
ドロドロに溶かし
新しく型に嵌めこんで
人型に造り直したかのような
(あの改造ってやっぱり…)
今、私の頭は
指とは違う文字を追っている。
脳無を造り上げたのは間違いなく医科学者だ。
いわゆるマッドサイエンティスト。
じゃなきゃあんな薬品の組み合わせ、思いつく訳がない。
ヴィラン連合と言ったっけ?
ただの烏合の衆だと先生方は言ってたけれど
そんな烏合の衆に
これ程の医療知識のある人間が
収まっていられるだろうか。
「それってちょっと……。」
無理がある…
そう思うのは、私だけだろうか…。