第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
半ば強引に切られた通話に
私の首は大きく傾いた。
確かに忙しい方だけど
(何だか不自然だったような…。)
無言になったスマホと睨めっこしながら
背中をボスっとソファーに預ける。
肘置きを枕に
無地白地の天井に後悔の二文字を描いた。
「ま、呆れられても当然かな。」
複数の“個性”
“個性”を分け与える“個性”
あんな飛びぬけた仮説を聞かされては
そりゃ話も切りたくなるだろう。
それが普通だ。
塚内さんはおかしくない。
「言わなきゃ、よかったかな…。」
言おうかどうか
かなり迷った。
突飛な発想は昔からだけど
誰かに言うなんて事、してこなかったんだ。
変な目で見られるって
わかりきってる事だもの。
以前の
中学生の私なら
今回の仮説も口にしなかったと思う。
だけど
複数の“個性”に関しては
昨日今日の仮説じゃないの。
『向こうでヴィランと思わしき人物を確保したそうだ。
ハイリ…診て貰えるかい?』
お父さんに言われて
拘束された脳無の元まで駆けたあの日
目にした怪人の体に傷なんてなかった。
身に食い込むほどの拘束にも
身じろぎ一つしなかった
ドームの屋根を突き抜けて
遥か先の林で見つかったにもかかわらず…だ。
(危険だからって刑事さんに言われて
結局あの日、診察は出来なかったけれど…。)
あり得ない次元の超回復
ダメージへの反応の無さ
間違いなく
脳無には2つの
もしかしたらそれ以上の“個性”がある。
「あの時点で
それは予想付いてたんだよねー…。」
非常識かと口には出さなかった。
だけどあり得ない話じゃない
“個性”の数の定義なんて
よく考えてみるとあやふやな物。
焦凍がいい例だ
「半冷半燃」なんて1つに括っているけれど
あれだって氷と炎
見ようによっては2つの“個性”だもの。
(大人から見たら
屁理屈ってヤツかもしれないけど…。)
言わなかったじゃない
ずっと言えなかっただけ。
今回は聞かれた
だから言った。
ま、その上で
呆れられちゃったわけだけど…。