第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
塚内は息をついた。
安堵ではない
落胆の息だ
嫌な予感が当たってしまったという
落胆の溜息。
(いや、ここはプラスに考えるところだな。)
これでとれる対策もまた変わる。
オールマイトに伝える内容もまた変わる。
チラと見やった壁の向こうの更に向こう
今頃彼は仮眠室で自分を待っている事だろう。
多忙なNo1ヒーローを待たせるのは忍びなかった
しかし
その価値は十二分にあったと言える。
向けた視線はそのままに
男の背は今頃になって粟立った。
原因は勿論彼女だ
(何もない所から
ここまで導き出したか。)
本当に
本当に末恐ろしい少女だ。
実感する。
ここまで雄英が彼女に固執している
その意味を。
この有能性が欲しいのではない
恐ろしいのだ。
少女が闇に落ちてしまうのが
この少女が敵に回ってしまうのが
きっと――恐ろしいのだ…。
ゴクリ
呑んだはずの生唾も下らない
久方ぶりの声は
掠れていた。
「毎度の事ながら…恐れ入るよ…。」
『揶揄わないでください!
真にも受けないでください!
そう考えれば辻褄が合うってだけで
あまりにも非現実的な仮説ですっ!』
途端に戻る、可憐な声。
『塚内さんが変なこと聞くから!』と
ぐずった言葉に小さく笑う。
普段の調子に
男は今
心から思った。
(良かった…。)
少女の心に闇が一切ないことに安堵し
そして悔いた。
捜査の為に
この少女に闇を診せてしまったことを
その闇に何のフォローもできない
今の現状を
そしてこれからも
依頼せざるを得なくなるであろう己の立場を
「そうだね、現実的じゃない。
無理を言ってすまなかった。」
今日はもう休めるように取り計らっておく…と
そう言葉を残して通話を切る。
何限目かのチャイムの音が
丁度、鳴り響いた――…。