第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
待っている身
それを差し引いても
間は…充分すぎるほどにあった。
わからない事はわからないという娘だ
言い淀んでいるのだろう
沈黙の間にも紙が擦れる音だけが
イヤホンの向こう側から聞こえてくる
少女の言葉は拙く
自信も無さげだった。
『故意に、造られた器…でしょうか。
薬物で複数のDNAを結合し“何か”の受け皿とする。
例えば…』
そしてまた詰まる
次に続く言葉が現実的ではないという証拠だ。
当然と言える
脳無が複数の“個性”を持っているという事実を
少女は知らないのだから。
いくら現代が“個性社会”と言え
複数の個性持ちなどまずありえない
だがそれこそが
我々がNo1ヒーローと共にずっと懸念していた
男の存在をチラつかせる事になる。
叶う事なら外れて欲しい
それ程に敵は凶悪だ。
なのに少女は言う
小さな声なのにはっきりと。
『“個性”…でしょうか。』
男はもはや
相槌すら打つ事も出来なくなっていた。
じっと佇んでいるだけだった。
これはもう…推測ではない
答え合わせだ。
僅かに開かれていた双眼は
再び閉じた
その顔が天井を仰ぐ
容赦なく降り注ぐ答えを
甘んじて受け入れるかのように。
『かなり、突飛な発想です。
DNAを複数結合させたからと言って
各々の“個性”が浸透するとは思えませんし…。
なので、あくまで…
あくまで仮説にすぎません、が――…』
情報を一つとして知らされていない少女
一人の
一人と言っていいかもわからぬ怪人を
たったの5秒、診ただけの少女。
その少女が導き出した
目を覆いたくなる現実―こたえ―。
(果たして……)
No1ヒーローに
オールマイトと会う前に
少女の推測を聞いておいて
正解だったのだろうか?
そんな事
悩むまでもないだろう…
『…――“個性”を分け与える“個性”が存在するならば、可能な話かと…』
正解だったに、決まっている。