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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン




雄英高校
その校舎の入口で塚内は目を閉じた。
電話口の
少女の声に集中するために。


瞼の裏に浮かぶのは白い壁
茶革のソファーと木製のテーブル
そして、味気の無いブラインドシャッター

普段は応接室として使っている
少女の為だけに与えられた部屋

廊下の突き当りに設けられたその部屋の前には
“プロファイル中につき入室厳禁”の立て看板。
自分が置いたモノだ。

今から少女が語る内容は
例え警察であっても誰もが聴いていい話ではない。

閉じた瞼に力が籠った
まるで、耳を澄ますように。
その声を聞き逃さぬかのように。


『鑑定結果と診察に
不一致は見られませんでした。』


先の事件で一人のヴィランを確保した。
雄英高校を襲撃した内の一人であるソイツは
脳無と呼ばれていた男。

取り調べども無反応。
DNA検査に出せども不可解。

故に頼むしかなかった
この、少女に。


『特に“個性”で隠ぺいしている事は
なさそうです。』


らしくもない
抑揚のない声は感情を抑えているのだろう。
依頼をした時はいつだってそうだ。

なにもこれが初めてではない
何度も助けられたその“個性”

だが、今回ばかりは
流石に堪えたか…

少女の声はいつになく小さく
口調は酷く機械的だった。


『改造に改造を重ねたのでしょう…
身の毛もよだつ程の薬物が
投与されている痕跡が見られます。』


これに関してはファイリングしている…と
添える少女は今、感情を抑えている。

何度診ても慣れる事がないのだろう
優しすぎるが故受け入れ難いのだろう。

初めてその“個性”を目にした時の事を
今でも覚えている。

まだ中学生だった
酷く怯えた亜麻色の瞳。

癒すために使う筈の目に
この世の闇を診せた。

塚内は息をつく
電話口に掛からぬ様小さく、細く

それでも彼女の診断が必要なのだ。

息ついたばかりの口を開く
喉がヒリと焼けるような心地だった。


「帰ったら見せてもらうよ。
続けてもらえるかい?」

『はい。大脳、主に前頭葉の著しい機能低下。
何をしても無反応だと仰ってましたが
ここまで低下していれば当然です…
なんせ思考停止状態なんですから…。』


その言葉に漏れた苦笑はいかほどだろうか…。

悉く、理にかなっている結果が
少女の有能性を浮き彫りにしていた。

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