第45章 【深緑色】オープン・クエスチョン
お友達が出来た。
名前は栗井 ミミちゃん
明るくて人懐っこくて
それはそれは可愛らしい女の子。
『え~もう切っちゃうの?』
「ん、ごめんね。
休憩終わっちゃう…。」
電話はマメだし
LINE返し忘れると拗ねちゃうし
遊び行こうじゃなくて
デートしようだし
なんか
なんだか…
『今夜…何時位から話せる?』
友達っていうより
彼女が出来た気分だ……。
「どう、だろうな…。
今日はちょっと遅くなりそう…。」
『え~~~!
初日からぁ!?』
「うんんん…ごめんっ!」
『わかったぁ…。』
「またLINEする!
ごめんね! 切るね!」
駄々こねてる姿までが目に浮かぶ
舌足らずの甘え声
こんな声で囁かれた日には
男の子なんてイチコロだろう…。
スマホに向かって
苦笑を漏らしながら通話画面を消し
次にLINE画面を開いては
またもや漏れる苦い笑み。
【声聞きてぇ】
こっちはこっちで
甘えたか!
私は君のお母さんか!
とは言え
焦凍の職場体験先はエンデヴァーヒーロー事務所
あれだけ毛嫌いしていた
父親の元へ行ったんだ
心境の変化があったとはいえ
それなりには…
(ストレスも、あるよね。)
職場体験一日目
まだ半日しか経っていないというのに
私はとてつもなく忙しい。
これがモテ期と言うヤツか
筋違いな事を考えた。
通話を切った理由は
実のところ時間ではなく別の通話で
その相手は残念ながら焦凍ではなく
――Prrrrr……
「すみません塚内さん、遅くなりました。
ハイリです。」
『こちらこそいつもすまないね。』
彼
塚内警部だ。
この度の職場体験先
蓋を開けてみれば成程納得
まさに消太くんの言ったとおり
「いえ、そのための指名だと
予想は付いてましたから…。」
『捜査の為とはいえ
まだ学生である君を利用している事
一警察官として深く…』
「お詫びなんて必要ありません。
どうせ父からの指示でしょう?」
何故警察から指名が来たのか?
そんな事、問うまでもない。
『では、早速だが
奴を診た上でのハイリちゃんの見解を
聞かせて貰って良いかな?』
全ては
捜査の為だ。
焦凍には申し訳ないけれど
話すのは夜になりそう…。
目の前に広げた用紙片手に
私は細く息をついた。