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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第6章 【桜色】物言えぬ処方箋


~Sideハイリ~


HRまで、まだかなり時間があるというのに
教室内の席が既に半分近く満たされているというのは
やはりゲートにたむろしていた、報道陣を避ける為だろうか。

見知った顔なんて殆ど居ない教室で
唯一知っている人物は目を細め
これでもかというくらい鋭い視線を投げつけてくる。

理由はあれど「学校では距離を置いていたい」と言いわれ
更には登校中にも拘らず自分を置いて行ってしまった。
そんな彼女が一時間も経たないうちに
こんな所に居れば
そりゃぁ…あんな目にもなるよねぇ…。

私、楠梨ハイリ
今まさに
蛇に睨まれた蛙状態です。












「ハイリちゃん、本当に助かったわ。
ありがとう。」

「ホント気にしないで!
もう大丈夫?」


「ケロッ」と返事をするのは先程お友達になったばかりの蛙吹梅雨ちゃん、“個性”は蛙らしい。
もちろん先程の『睨まれた蛙』ってのは私の事だし
梅雨ちゃんにかけたつもりもない。

だってまさにその状態なんだもの。


「どうかしたの? ハイリちゃん。」

「んーん…ヒーロー科ってだけで緊張しちゃって。」


決して嘘じゃない。
後ろから刺さる視線が痛い。
結構な緊張で今や動いているのは表情筋くらいだ。

まさか梅雨ちゃんが
事もあろうか轟くんと同じクラスだったなんて……。









あれからマスコミの海を抜け、なんとかゲートをくぐった私は下駄箱の手前で蹲る小柄な女の子に声を掛けた。
聞けばあのマスコミの波で気分が悪くなってしまったとの事。

本当に迷惑なマスコミだ。

とりあえずは「酔い止めを持っているから」と手渡し、心配だったからクラスまで付き添う…それで終わるはずだったのに

まさかの1-A!


(こんな可愛い子がヒーロー科だなんて思わなかったよ…。)


どんぐり眼にひの字口、つやっつやのロングヘア―を下の方で蝶々結びだなんて…
こんな可愛い子がヒーロー志望だなんて誰が思う?

差し掛かった1-Aのドアの前で
「ここよ」と言われた時は、顔は笑っていても心は泣いていた。

それでも約束は約束。
蛙吹という名前だけあって席は入り口近くだろう、送り届けてすぐ退散すればいい。
そう思ってクラスに足を踏み入れたのが運命の分かれ道だった。


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