第44章 ♦番外編♦ Xmas シンドローム
おしゃべりでおませな娘と
大人しくしっかり者の息子
二人とも
優しい子だ。
キャーと言いながら抱き付いたかと思ったら
そのままパパをおもちゃにして遊んでいる
それに笑っている間にも
いつの間にやらネックレスを自慢し合っている。
髪も服も乱されているパパは置いてけぼりだ。
本当に、子供というのは見ていて飽きない。
(本当は、返してもらうつもりで
語り続けてきた寝物語だったけど…。)
この子たちになら
彼も文句は言わないだろう…。
なんせ10年前だって言わなかったのだから。
置いてけぼりをくらったその彼は
わかったとばかりに
片肘をついて笑っている
今も昔も
全てお見通しだ
(返してもらう日は
もっと大きくなってから…)
“個性”の事を
それ以上に素敵な奇跡がある事を
理解出来るようになってから…。
きっと、何年も先だろう
その頃にはきっとこの子たちにも――…
母は口元に笑みを浮かべ
幼い二人の頬を撫でた
「素敵なクリスマスプレゼントね
大切にしてあげてね?」
「うんっ!」
「わかった、たいせつにする。」
母の笑顔に安心し
幼い二人は同時に欠伸を一つずつ
おねむの時間だ
今日は流石に疲れただろう。
今日はもう
あのお話はしなくていいだろうか
明日も、明後日も
これからずっと……
―――
クリスマスに
パパとママのそっくりさんがやってくる
仲良く遊んだ後は
ちゃんとパパとママの事教えてあげてね
その二人はいつか
あなたたちのパパとママになる人なんだから
忘れちゃいけない
プレゼントのネックレスを貰ったら
教えてあげて
私達だけの秘密の場所
雄英の先生のお家の北の方
真っ直ぐ行った一番奥
お日様が消えちゃう前に
言わなきゃいけないよ
じゃないと
パパとママに会えなくなっちゃうよ
―――
もうきっと
必要はないお話
それでもきっと
今日もお話してと二人は強請るのだろう
幼い二人限定の
不思議な不思議な物語を…。