第44章 ♦番外編♦ Xmas シンドローム
子供たちが寝静まり
家には静音が訪れた
キャンドルのみが明かりを灯す部屋の中
ソファーで寄り添う二人は
静かに、穏やかに語りだす。
寄り添う影が
大きく壁に映し出されていた。
「やって良かったのか?」
「いいの、気に入ってるみたいだし。」
「ずっと楽しみにしてたろ? お前。」
「いつかは返してもらうつもり…そうだな
あの子たちに私達より大事な人が出来る頃…かな。」
「…………嫁に出す時の事なんざ
考えたくもねぇな。」
「貴方ね…お願いだからいつかは娘離れしてよ?
私たちが結婚する時、大変だったの覚えてるでしょ?」
「親父さんの気持ちならすげぇわかる……。
可愛い娘を奪われてたまるか。」
「その親父さんの娘を奪った張本人が
よく言う……。」
こんな言葉がある
人生とは分岐の連続で
過去から見た現在は
幾通りもある未来の内の一つに過ぎないのだと
今日、こちらへと迷い込んだ二人は
今の自分たちと同じ道を辿れるのだろうか
わからない
もっと素敵な未来へ進むのかもしれないし
ものすごく辛い未来が待っているのかもしれない
それでも願う
幸せだから願う
どうか今へと辿り着けますように……
「そういや俺へのプレゼントはねぇのか?」
「ちゃんとありますよ?ここに……。」
頬を撫でる大きな手を取り
自分のお腹へ
そっと乗せられた場所に男は
目を細めて息を零した。
「そうか…今日病院行ったのか。」
「はいな、6週目ですよ?」
「そりゃとっておきのプレゼントだ。」
「私も…。」
手を重ねて微笑みあう
壁に映し出された影が近づいて
ゆっくりと重なり合った。
絡め合った指に光る二つのリング
重なったそれはまるで
あの日誓ったダブルループのように
今までも
これからも
絶対に離れたりはしない
生涯、貴方と共に―――…
これは幾多ある二人の未来の内
とある一つの物語
果たして
誓いのネックレスを
二人が再び手にする日はやってくるのだろうか
答えは……
10年後のお楽しみ♡
Xmas シンドローム ~END~