第44章 ♦番外編♦ Xmas シンドローム
――――……
「ねぇパパきいてっ!」
「ママもきいて。」
「今日ね」
「ぼくたちね」
「「そっくりさんにあったよ!」」
二人が小さな微笑みを浮かべていた頃
こちらの二人もまた
小さな微笑みを浮かべていた。
「やっぱり今年だったのね。」
「歳、聞き忘れたもんな。」
そっと重ね合わせた左手の薬指には
ネックレスとは違うペアのアクセサリー
あの日からずっと
この日を待ち侘びていた。
預けたネックレスが
再び手元に帰ってくる日を
「ねぇ二人とも、貰ったネックレス
ママにも見せて?」
二人の首にかけられたネックレス
それは当然と言えば当然だが
10年前と変わらず白金に
一切の濁りなく輝いている
懐かしさに
声が少しだけ震えた。
「また、会えたね…。」
あの日この子たちが自分たちにくれた言葉を
今も、はっきりと覚えている。
嬉しそうに語るその声も
二人抱き合ってはしゃいでいた姿も全て
「……ママ?」
泣いているのかと眉を寄せ
見上げる娘の頬を母の指が撫でた。
同じだと
あの日と同じ色だと。
「ちゃんと…おしえたよ!
ママのこと、どうおもってるか!」
「ぼくもおしえた。
パパのこと!」
記憶の中と同じイチゴのような赤は
ちゃんと出来たから泣かないでと
縋るように訴えている。
今にも泣きそうな顔で
心配そうに。
(ああ、今なら…)
今なら問える
あの日怖くて飲み込んだ質問を…
緊張しているのか
喉がコクと鳴った
「二人ともママたちの事嫌じゃない?
寂しい時だってあるでしょう?」
答えなんかわかりきっているだろう、と
肩を抱く夫の肩に頭を預けながら
見上げる二人の髪を撫でる
不思議そうに顔を合わせた幼子たちは
同時に吹き出し
キャッキャと笑い出した。
「すきだよっ! だぁいすき!!」
「うん、ぼくもだいすき。」