第44章 ♦番外編♦ Xmas シンドローム
大きな手が指をなぞり
絡められた
隣から注がれる轟の視線は
優しく、温かい。
ハイリの独り言は
聞こえていたのだろうか
(ううん、たぶん……)
感じ取ったのだろう。
今だけではなく
今日抱いていた気持ちの全て
そういう人だ
そういう彼だ
ならばきっと
これも許してくれるだろう…
徐に指を解いたハイリは
うなじへと手を回す。
チャリ…と音がした。
「これね、私の宝物なの。
クリスマスプレゼント、貰ってくれるかな?」
テーブル越しに掛けてあげた
幼い首には長過ぎるネックレス
出逢った証に
幸せをくれたお礼に
また出会えるようにと
人差し指を立てる。
クスと微かな笑い声
了解したと轟もまた
自分とそっくりな少年へ対のネックレスを差し出した。
「ねっくれすだ…。」
「ねっくれすだね。」
途端
目を輝かせる幼子二人
小さな両手を口に当て
感激の声を上げる
ひそひそと話しているつもりなのだろうが
丸聞こえなところはやはり子供か
何やら相談中だ
「やっぱり…!」
「だからいったろ?
ぼくはわかってた。」
「わたしだってっ!!」
「どうする?」
「どうしよう…。」
やんややんやと言い合いながら
小さな目は
二人同時に窓へと向いた
小さな手をペタっと貼り付け
おでこもくっつけ何かを探す。
ほんのりと濃さを帯び始めた東の空は
青いグラデーション
夜の帳の裾の色だった。
「たいへん! かえらなきゃ!」
「くらくなる…。」
説得する前に自分たちから言い出すとは
大変物わかりの良い子たちである。
「はやくはやく!
くらくなったらたいへん!」
「みえなくなる…。」
背を押されるように店を出た
『暗くなる前に帰りなさい』と
言われているのだろう。
物凄い慌てようだ。
それは最後の抱っこをせがむものの
家まで送ることを頑なに拒否する程。
「いそいでかえらなきゃいけないから…。」
「そう、いそがないと…。」
駅の前でそう言った。
それでも寂し気に垂れた眉と眉
俯いた少女の頭を少年が撫でた。