第44章 ♦番外編♦ Xmas シンドローム
「パパはぁ、ママがいちばんで
ママはぁ、パパがいちばんなの。」
「ぼくたちは、にばん。」
可愛らしい笑顔で
なかなかに凄いことを言ってのける少年少女は
果たしてわかっているのだろうか…?
この世の何処に
我が子に二番だと言って聞かせる親がいる
ハイリは勿論の事
流石の轟も表情に出ていた。
「なかなかすげぇこと教え込んでんだな…
俺ら…。」
「言わないで…胸が痛い…。」
形は違えど
最優先で育てられた二人にとって
これは衝撃だ。
ケーキのイチゴを
同じタイミングで頬張る子供たちは
レストランに入っても
親の…未来の自分たちの話を止めようとしない。
「ようするにねっ!らぶらぶなのっ!」
「ぎゅーってしてる、いつも。」
真似をしているつもりなのだろうか
またもや同じタイミングでフォークを置き
ぎゅーっと抱き合う自分たちにそっくりな子供たち。
微笑ましいまでに仲がいい
が
「「ねっ?」」
同意を求められても
返す反応があるわけない。
「そうだな…」
「うん、伝わった…」
幸せそうには見える
見えるがそれは
この子たちが二人だからだろう
『そんな親で、嫌だとは思わないのか?』
ハイリは怖くて問えなかった。
自覚をしていないなら
しないに越したことは無い。
早ければ早い程
それは深く根を張る感情だ。
首を振り、口を噤む
なのに言ってのけるのだ
二人、口をそろえて。
「わたし、ママみたいになるの!
みーんなママみたいなママがいいって!
わたしのママ、いちばんなんだよ?」
「ぼくも!
パパみたいなひーろーになるっ
すごくつよいんだ! いちばんつよい!」
「「だからねっっ」」
幸せなんだよ、と
上気する小さなほっぺはイチゴの様
真っ赤に染めるほど興奮して
自分たちの親が如何にすごいかを語ってくれる
その色に噤んだ口は噛み締められた。
「―――…っ。」
何かしてあげたいと思っていた
今日くらいと何か素敵な思い出を、と
だけど貰ったのは
与えられたのは小さな彼等ではなく
寧ろ――…
「私達の方、だね。」
カランと音がした
客が入ってくるベルの音。
その音にかき消される程の微かな独り言
なのに
膝の上に置かれた両手に
大きな手が重ねられたのは
一体、何故だろうか…。