第44章 ♦番外編♦ Xmas シンドローム
「まず、状況を整理しなきゃ…」
比較的人気のない公園で
ブランコをキィと鳴らしハイリは天を仰ぎ見た
透き通るような空の色
薄雲さえない冬の空
輝く日は白く
そこにあるのは今朝見たものと何一つ代わりない
だが冷静に見渡せば
違いはそこかしこに溢れている
テレビやポスター
道ゆく子供が手にしている人形までが
時代を、物語っている
「未来なんだろ
で、あいつらは俺らのガキなんだろ?」
「そう、なんだけど…」
そこはもう信じた
嬉しすぎる未来の現実に喜べども
頭が容易に追いつかない
順応力の高すぎる恋人に溜息をつき
ハイリはブランコを漕ぎだした。
「この親にして、この子たちあり…
と言ったとこかな…。」
高く低く
上下する視界の中には
滑り台を交互に滑る子供たち
自分たちを親と呼ぶ二人の子供に
『親じゃない』と慌てて解こうとした誤解は
難なく受け入れられたのだ。
『ほんとだ
パパはもーっとね、せがたかいの!』
『でね、もっとかっこいいんだ。』
全くこれだけの人を捕まえて
もっとカッコイイなんて流石ですか…。
もう自分も何を考えるべきかわからない
そんな間にも子供たちは答えをあっさり導き出してくれた。
『わかった!
そっくりさんだねっ?』
『あぁ、そっくりさんか。』
そっくりさんとはなんだろう…?
コスプレ…か何かだろうか?
コスでもなければ
勿論メイクもしてはいない
だが、それで受け入れてくれるのならば
それが一番いいだろう。
頷いた上で懐いてくれたこの子たち
我が子とあっては
放っておくこともできはしない。
親に会いにきたと揃えて言う口は
よくよく聞けば
会いに来たというよりは探しに来たというべきもので
『パパ…きょうも、ひーろーなの。』
『ママはびょーいん。』
未来の自分が
一体どんな仕事をしてるのか
気にはなったが今はそこじゃない
しっかと握り合った小さな手と手
まるでお互いを温め合っているかのように
支え合っているかのように…
何かを重ねた
自分達を重ねた
ぎゅっと締め付けられた胸はそのままに手が伸びた。
今日ここに立たされた理由があるとするならば
それはきっと――
『よし! じゃあ今日はお姉ちゃんたちと遊ぼう!』
――この為なのだろう、と。