第43章 ♦番外編♦ Xmas Eve シンドローム
正直に言ってしまえば
断言できる程の確証など
ハイリも持ち合わせていなかった。
自分も抱えているのだから当然だろう。
未来など誰にもわからない
そしてそこに「絶対」などあり得ない。
夢を信じるには過ぎた歳
だけど夢を叶えるには足りぬ歳
「焦凍…私はずっと側に居たいよ…?」
年若い二人にとっては難題だ
だから言葉にするしかない
珍しく甘えたな恋人に
安心してもらいたい一心で
ハイリは紅白の頭を抱き締めた。
―――シン……
甘い聖夜に訪れた沈黙は
予想外に重かった
ハイリは悩む。
言葉を間違えたかと。
焦りが熟考を放棄した
混乱が言葉を歪曲した
この一言は今
一番言ってはならないものだった
だが
ハイリは焦りが故
口にしてしまったのだ。
「…ッッじ、じゃぁ!
既成事実だけでも作っとこっか!!」
深くは考えていなかった
つい先ほど冗談に隠した『小さな本音』の延長に過ぎなかった。
最終的には轟も笑って頷いていたから
通用すると思っていた。
だが言ってしまったのだ。
なんと言い訳しようがもう遅い。
「焦凍……?」
肩口に埋められたままの頭が小刻みに揺れる。
クスクスと音を伴って吐息が首筋に触れる。
次第に肩が揺れ、唇が肌を伝い
上げられた瞳は心底愉悦に満ちていた。
「ハイリならそう言ってくれると思った。」
抱きしめていた筈の身体は
いつの間にやら立場逆転
強く抱きしめられていく。
突如雰囲気を変えた恋人に
疑問符が脳内からあふれ出す。
何が起こったのかさっぱりわからない。
ただ一つ、確かなことは
『絶対伝わっていない』
それだけ
「焦凍、あの、意味…
わかってないよね……?」
もがきながら首を振る
いつになく強い腕だ
まるで『絶対逃がさない』とでも言いたげに…
だてに彼女はやってない
ハイリの本能は察知していた
(嫌な予感がする……。)
この流れは駄目だ
駄目だ駄目だと首を振る
敵う訳がないと
わかっていたにもかかわらず…
間近に迫った瞳は美しく細められた
射すくめるソレは狩人の様
ゴクリと喉が鳴る
ゆっくりと開かれる唇を
どこか腹を括って見つめていた。
「ハイリの子供なら
絶対可愛いよな。」