第43章 ♦番外編♦ Xmas Eve シンドローム
顎に伸ばした手に絡みついてくる
請うかのような指
何を求められているか
そんなもの聞くまでもないだろう。
何度繰り返そうと飽きようの無いハイリの反応を
轟は目を細め見やる。
ぐずぐずに蕩け、芯の抜け落ちた躰
溜息が出るほど艶めかしく
肌、粟立つ程に美しい
大きく上下するその胸元で白金がキラと光った。
「もういいか…。」
オープンハートとサークル型の
ダブルループデザイン
決して離れる事のない二つの輪は
まるで自分の願いの様だと
細いチェーンを指でなぞる
今日はこのネックレスに免じて…と
覆いかぶせたその身に
ただでさえ昇り詰めたばかりのハイリ体は
更に赤く染まりあがった。
モミ型の木を彩るリンゴのオーナメントのよりも紅く
部屋に揺らめくキャンドルの灯りよりも朱く
――その姿に満たされる
抵抗するはずのないその腰を抱え込み
轟はゆっくりと腰を落とす。
「ぁっ…あぁぁっ…」
「ハッ…少し、力抜け…ッ。」
触れ合う肌と肌の間で
二つの白金がカチャリ…音を立てた。
――ちゅぷ、ちゃぷ…ちゃぷっ
味わうようにゆっくりと
腰を動かす度に響く水音は
もはや水遊びでもしているかのようだ
シーツに出来上がった水溜り
その大きさが物語る
如何に時間を掛けたかを
押し倒した時はかろうじて明かりを保っていた空もとっぷりと
いつしか冷たい霧雨は淡雪へと姿を変えていた。
幾度と思う
何度も言った
それでも足りない
伝え切れない
火照った身体を照らす橙色
ユラと形を変えては影を作り柔らかな曲線を淡く照らす
彩りに落ちた淡い影に沿って舌を這わせれば
熱がこもった声が高く上がる。
「やぁっ…んっ、はぁ…ぁっ。」
だが足りない。
どうしても足りない。
どれだけ満たそうとしても
ソレの容量が100になる事など決して無い
轟は思う
ハイリの愛情を疑う訳じゃない
自分の愛情に嘘偽りなど無い
大人からすれば
子供のままごとに見えるかもしれない
それでも自分たちは真剣に想い合っている。
だが同時に知っている
言葉の上ではわかっている
――この世に“絶対”なんて事は無いのだ、と…