第43章 ♦番外編♦ Xmas Eve シンドローム
「あっ…ふっ、あぁぁあっ、やっぁあ…っ」
激しい水音が響く薄闇の中
ようやくもたらされた逸楽にハイリは奥歯を噛み締めた
ただでさえ溶かされ続けたこの身体は
性感帯が全開の状態なのだ
押し開くかのように自分の中を犯す
熱塊は時間を掛けた分その質量も増す。
ミチミチを音をたてて入ってくるソレは奥へ、奥へと
抉られた最奥に
パチリ、火花が飛び散った。
(意識、飛んじゃいそう…)
果たして噛みしめた歯は意味を成しているのか
襲い来る悦楽に
その歯がカチカチと音を成す
その度に火花が散って目も開けてられやしない。
「あ…あっふ、ぅんンッ」
白、黒と瞬く世界で大きく息を吸う。
なのに轟がその口を塞いでくるのだ。
味わうようにねっとりと
絡められた熱い舌
目が利かないからこそ感じてしまう
優しい指先が自分の胸を包むのを。
柔く強く
打ち付ける熱杭と同じテンポで与えられる刺激は波のよう
寄せて引いてを繰り返し
意識もろとも連れ攫って行く
――今宵、特別な聖夜を
ああ、確かに特別だ
打ち付けられるたびに目の前で揺れる
ハイリのそれと対を成すネックレス
「絆」を象徴する二つの輪に指を掛ける
チェーンを辿り鎖骨、首筋へと
汗ばんだ肌を伝い
紅い髪を梳き
愛おしそうに頬を撫でた。
一つと成れた悦びを
こんなにも味わった事が今までにあっただろうか
口元に薄らと浮かべた笑み
視線を絡めれば愛しい男もまた笑みを浮かべている。
「余裕そうだな…?」
クスリ、微かな笑みはどちらのものか
瞬間、ハイリの身体に電撃のような刺激が迸った。
「…――ッ!? ッんぁあっ…ッ」
一層深く突き立てられて天井を仰ぐ
反らした喉は息を詰めた
先程までとは違う重力感にぼやけた目を凝らせば
ベッドへ横たわっていた筈のこの身は
今や男の膝の上に座らされている
(ふか、い…ッ)
自分を貫いた衝撃の正体を理解しつつも、口からは掠れた声しか出なかった。
「は…ぁっ…すこし、待…っ」
「待て」と伝えたハズだった。
だから衝撃は休んだはずだった。
「―――っ!」
突然胸に走る痺れ
声を飲んで
嬲られるがままに肩にしがみ付く
奮える指で立てた爪
揺れる視界
そこにはひっかき傷が幾筋も描かれていた。