第42章 【深緑色】医療保険~指定難病恋型~
零れる蜜が肌を伝う
そんな細やかな感覚までも鮮明に感じてしまう。
シーツに出来上がった水溜りが肌に触れようとも
焼け石に水どころじゃない、むしろ火に油。
それは
ただただ燃え上がらせるだけで
私の体を決して冷やしてくれなかった。
――ぬち…、ぬち…っ
粘着質な水音が鼓膜を犯す。
優しすぎる愛撫に
身体より心が熱をあげた
燃え上がった心は火の粉を散らし
感覚という名の導火線を辿って身体へと引火する。
抵抗する気なんてとうに捨てたハズだった
なのに今日は抵抗すらさせてくれない
そんな材料
どこにもなかった。
「可愛い…」
そう言われる度に
自分の中がきゅっと疼く
まるで労わってるかのような扱いが
もどかしくてたまらないのに
同時にくすぐったくて
なぜだろう…
込み上げてくる。
塞き止めようにも止められなかった雫が
眦からぽろり、零れた。
「しょ…っンッ、ゃっ…はっ…っ」
初めての感情を
なんと言い表せばいいものか
涙を掬った指先は彼の口元へ
その口は今日
一度として私に歯を立てていない
肌の上を滑って啄んで
擽ったくて
心の中までくすぐったくて
ほら、また
溢れ出る。
――こぷ…っ
ポットの底から
浮かび上がる気泡のような音
涙を零し、蜜を溢れさせる
もう、きっと水分不足だ。
ぴったりと合わさった肌と肌が隙間なく滑り合う
敷き詰められ伸ばされた潤滑油は
そろそろ発火してしまいそう。
ゆるゆると与えられる刺激は断続的に
芯が擦れ合う度に痺れるような刺激が走る
それはまるで
私の反応を伺うかのようで
コンコン、と
ノックするかのようで
「はぁ…っ、ぁっ」
躰、熱い
頭、まわってない
舌も、まわってない
「しょう、と…っ」
「……ん?」
でも
これだけはちゃんと理解はしてる
素直な心はちゃんと届くって事
今日の私を熱くしてるのは
悦楽じゃない
この人の心だ
「しあわせ…だよ?」
ほら、
ちゃんと言葉に成った。