第42章 【深緑色】医療保険~指定難病恋型~
あまりに華奢な身体は
少し力加減を間違えば簡単に壊れちまいそうだ。
潰したら大変だと
ハイリの横へと肘を付く
抱きしめた身体は熱に溶けあがり
くたりと俺の方と向きを変えた。
(よくも今まで壊れなかったな。)
感心して自嘲する
壊す様な事してんのは他でもねぇ
自分自身だってのに……。
潤んだ瞳が熱い眼差しを零し
熟れた唇は蕩けた息を零す。
ベッドシーツを乱しながら
この腕に抱かれる女の姿は微笑ましい程に扇情的だ。
求めるように力を込める
細い腕が俺とハイリの距離をまた詰める。
「ぎゅ、って、して…?」
媚薬の様な囁きに言葉を返しながら
失笑を漏らした。
「わかってる。」
ずっと
これに甘えてきた
求めてくれりゃ何しても良いって訳じゃねぇんだ
大事にしてぇなら
幸せにしてぇなら
(それこそ壊さねぇように……)
そっと撫でた足の付け根は絹地の様だ
滑らかで、いつまで触っていようが飽きが来ねぇ。
圧をかけずとも過ぎるほどに身を捩る
曝け出された喉に刻まれた赤は重てェモン
「まだ痛むか?」
昨日付けた噛み跡を舌でなぞる。
昨日だけじゃねぇ
幾度となくコイツの肌に刻み続けてきた
それこそ
俺だけは許されている
それを主張するが如く。
「ど、したの…?」
罪悪感に伏せた目元をふわりと撫でた細い指。
撫でる視線は
気遣う言葉に反してただただ強請る
ハイリはそれどころじゃねぇんだろう
「いや、悪かった。」
わかってる。
お前が欲しくてたまらないモン
「ぅ、ん…? んんっ…っ」
傾げた頭を抱えて
疑問を出しかけた唇を啄んだ
きっとこの詫びは
口で詫びて済むレベルのモンじゃねぇ
磁力に吸い寄せられるように重なった唇の間で「ゥン…」と仔猫の様な啼き声が上がる。
鳴き声ごと絡め取り舌を吸いあげれば
今度は涙が一滴零れおちた。
――この涙すら余す事なく愛したい。
こめかみから眦へ
舌で雫の道を辿る。
労わる様な
慈しむような行為は贖罪だ
痛め続けただろう胸を撫で
刻んできた痕を舌で這う。
「…っは、ぁ…っ」
息は官能的なまでに
朝の光へと溶けて落ちた。