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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第42章 【深緑色】医療保険~指定難病恋型~




―――………


翌朝はハイリの声でも
アラームの音でもなく
眩しい光に起こされた。

寝ぼけ眼で見渡した部屋ン中
前回のカーテンから差し込む光に


(コイツが犯人か…。)


深くも考えず目を閉じる。

手を伸ばしてふと気づく
隣にハイリが居ねぇ事

覚醒に向かって回り始める脳内が
いつかの記憶を引っ張り出した


『おはよ、轟くん!』


薄桃色の花びらから透け落とされた光の様な
春の温かな笑顔

あの日、あの温もりに俺は恋をした。


「ハイリ…。」

「んーー?」


ゆっくりと上体を起こしながら名を呼ぶと
すぐに返って来る声。

あの日と同じ景色

向けた背も
向かうテーブルも同じ
テーブルの上にある便せんも
振り向く速度も
揺れる髪も


「おはよ、焦凍!」


ただその笑顔だけは
あの日より数段綺麗だった。

コーヒーを淹れて来ると立ち上がる
その手を掴み腕の中へと閉じ込める

ずっと気を揉ませてた
その理由を話そうと思ったからだ


「昨日の続きだけどよ―――…」


昨夜は話せねぇまま寝ちまった
いい加減意地悪もここまでだろと思ったってのに

表情がフッ…と和らいだ
長い睫毛の影はその頬へ
唇が弧を描き、俺の言葉を遮った


「もういいんだよ…?」


声の後に触れた柔らかな温もり

時にして1、2秒
触れるだけの短いキス

微かな水音を立てて離れた唇は
柔らかな笑顔を飾る彩

優しく垂れた亜麻色の瞳に
また心を奪われた。


(―――…っ。)


毎日、毎時間奪われる

目を合わせる度に
その存在を目にする度に

此処のトコ俺の所為でずっと気を揉んでたハイリは
どうやらこの一晩で余裕を取り戻したみてぇだ


「本当に良いのか?」

「その内わかるんでしょ?
なら待つことにする。」


指先で目元を撫でられる
――柔らかな髪を梳く

その指が頬を撫でる
――その髪を耳にかける


囁き合いながら確かめ合う
二人の所作
もう慣れ親しんだ互いの癖


(話すのはかえって無粋か…。)


そう思えた。

ハイリの言うとおり
どうせ俺が話さずともすぐわかること。

それに
今はンな事よりも…


「ハイリ…。」

「ん?」

「今何時だ……?」

「…7時前、だけど?」


やるべきことがあんだろ。

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