第42章 【深緑色】医療保険~指定難病恋型~
私の恋心のすぐ側には棘がある
鋭利な切っ先はいつも喉元に向けられていて
いつ刺さるのか
その時を私は常に恐れてる。
今か今かと待つように構えては
その時が来ても大丈夫なようにと対策を練った事もあった
欲って大きくなるもので
どんどん我儘になるの
あの時は大丈夫だと思った
「その時が来ても耐えられる」って
でも今日思ったの
私、全然大丈夫じゃ―――…
「大丈夫だ。」
それだけ言って細められた二色の瞳は
呆れに満ちているように見えた。
「しょうがねぇな」って
「手のかかる奴だな」って
言われてないのに伝わってきて
多分、落ち込むトコだ。
だけど
そこに愛情みたいなのを感じてしまって
ここで初めて気付いた。
(はめられた、気がする…。)
知られたくない事まで
バレちゃった気がするってね、思ったんだ。
何も言わないから責められないし
問うに問えない
もしかしたら違うかもしれないしさ
でもね
予想はあながち外れてないと思う。
「なんか約束するか…。」
小首をかしげてそう言った。
彼の優しい眼差しが
私の為の約束だって物語っていたの。
「約束ってどんな?」
「さぁな…二度と不安にならねぇヤツ。」
「またアバウトな…。
そもそも絶対的な約束なんて存在するのかな。」
「随分と引け腰だな。
人には散々大丈夫だと言うヤツが。」
「私は大丈夫、その自信があるんだもん!」
「俺だってある。」
こんな会話
初めてなんだけど、ね
わかる…
これじゃキリがないってコト。
お互いに「大丈夫だ」って言って譲らないんだよ。
もう軽くコントだ
「私だって」と「俺もだ」の押し問答
問答かどうかも怪しいところ。
もう約束いらないんじゃない?って
言おうとしたんだ
もう十分だから
もう大丈夫だからって
もういいよって言おうとして
私に覆い被さっていた身体はクルリと半回転
勢いよく隣に寝転んだ。
「あぁ……じゃ、こうするか――…」
本っっっ当にね
いつもの事ながら華麗に遮ってくれちゃうの
マイペースな人だなって毎回思う。
それでも
いつも私の常識を打ち砕くこの人に
絡めとられた指を握り返しながら
期待の眼差しを向けた。