第42章 【深緑色】医療保険~指定難病恋型~
柔らかな掌が頬を包み目元を撫でる
優しく細められた瞳には苦笑が見えた
「私の爆豪くんに対する態度
特別に見えたり…した…?」
詫びを添えて唇をかみしめる
自嘲の誘因は自己嫌悪
違ぇ…お前を責めたい訳じゃねぇ
俺に触れる指はいつもより控えめに
まだそこに傷でもあるかのように遠慮がちに撫でる
「焦凍だけだよ…。
焦凍は特別なの。」
後悔が震わせる女の言葉に
良心の呵責に苛まれながらも
唇は安堵の弧を描いた。
俺だけだと言って貰えたことだけじゃねぇ
やっと、知ることが出来たからだ。
(“特別”…か。)
人が人の感情を推し量る時
そのものさしは何処からくるモンなんだろうか
『人に優しく』
一般的なお決まり文句はあるだろう。
やって良い事と悪い事
普通の人間ならそんくらいの区別はつく。
だが
もっと複雑な感情になると話は変わってくる。
価値観なんざ人それぞれだ
普通なんてもんはねぇ
そこに全共通の決まり文句はなく
人によっちゃ正解で
人によっちゃ不正解
故に人はこう考える
『自分だったらどうだろうか』と。
結局そのものさしは
自分のモンしかねぇんだ。
『自分がされて嫌なことはするな』
誰もが知ってる言葉だ。
同じ立場に立ち
初めて相手を理解する
その上でされる選択は――…
まんま、当人にとっての正解だと言っていい。
『特別に見えたり…した?』
『焦凍は特別なの。』
言葉は無自覚
本音を吐露する口元は
未だ噛みしめられている
ずっと疑問だった
なぜ突然不安を見せたのか
(あの女が特別に見えたのか…。)
すぐ矛先を自分に向けたがるコイツは
自分に対してあまりに不器用だ。
人には素直になれと言いながら
自分は全く本音を出せねぇ
直接聞いたところで
答えやしねぇだろう
(確認して正解だな。)
息をついた。
幼い表情を撫でながら
呆れと安堵の息をついた。