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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第41章 【深緑色】自己CHIYU




時はほんの少しだけ遡る――…








『しょ、とっ…ぁあっ、しょぉと…ぉっっ』








泣き声の様な啼き声が
たかが壁一枚、扉一枚に収まるはずもねぇ

いけ好かねぇ野郎の名が響く保健室
その前の廊下で
心ン中を覗かせる気配のねぇ黒眼を見据えながら
あからさまに舌を打った。


(自分が何してぇのかわかんねぇ…。)


何のためにこの女を問い詰めてんのか
俺は誰の為に動いてんのか

その誰とは俺にとって何なのか
ソイツは今、誰とナニしてんのか


(わかってたまるか…ッ!)


向ける先のねぇ苛立ちは自分に向けた

溜め息一つ
上向いた鼻から抜けていく

八つ当たり?
んなモン出来っか

この声を快く思ってねぇのは
この女だって同じなんだ


「あの二人、仲良いんだねぇ~。」


暢気な声を上げて扉を見上げる
その横顔は振り返った時から一ミリも変わっちゃいねぇ


『今朝、目ェ合ったよなァ?』

『え~? 知らないなぁ…。』


苦笑を交えて頬を掻く
困ったと言わんばかりの女の表情は
疑いの目をもってしても騙され兼ねねぇ自然なモン。

だがよ
その自然さが俺に確信をもたらした


(逆に不自然だろーがよ…。)


女の視線を辿れば
そこには白い壁、そしてドア

聞こえてくる啼き声が誰のモンか
その女を啼かしてんのが誰なのか

俺同様
この女がわからねぇ筈がねぇ

普通何かしら表情が変わるモンだろこりゃ

仮にこれがウチのクラスの女共なら
赤面しつつギャーギャー騒ぐ

いつもはウゼェと聞き流す雑音も
今なら余程マトモに思えるってモンだ。


「でー? 何の話だった…っけ?」


思案する視界に突如現れた顔

首を大きく傾げて向けられた笑みに
ゾッとした。

目も口も
その角度は一ミリだって変わりゃしねぇ

化けの皮を剥いでやる

そう思ったのは確かだが
本当にバケモンが人間の皮を被ってるみてぇだ

返事を返す前にゴクリ喉が鳴る


「テメェが嘯いてっから話が進まねーんだろーが…。」

「え~? 嘘なんかついてないよ~?」


女は開いた手を口元にあて
大袈裟に驚いて見せた

ずっとこの調子だ

いくら問い詰めども暖簾に腕押し、糠に釘
全く手ごたえがねぇ…

のらりくらりと躱されて
本性どころか動揺すら見せやしねぇ

ったく
薄気味わりぃ女だ…。
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