第41章 【深緑色】自己CHIYU
「は…ぁ…っ。」
心地良い体温と安心する重み
深く息をついて浮かぶのは純粋な疑問だ。
焦凍の首筋に埋めた頭を少しだけ捻ると
ころり、疑問が零れた。
「なん、で教えて…くれない、の?」
話してくれるのを私が待ってる事
絶対気付いてる。
焦らしてそれを楽しんでる
それも間違ってないと思うけど
ホントにそれだけかな?
「もう少し、妬いてるお前を見ていてぇ
言っただろ?」
すり寄る頬は柔らかい
仕草も
髪を撫でてくれる手付きも
なのにぎゅうって込められる力はとても強くて…
(流されてしまいそう…。)
そう
この人、流そうとしてる
意地悪とは違う別の理由が
ちゃんとある
冷静になった今
言い切ってもいい
焦凍が隠そうとしてたのは
私が駄々をこねる前からだって事
「言ってはいたけど…ね。」
不安にさせたい訳じゃないと思う
泣かせたい訳でもないと思う
それでも教えてくれない
その気がない
わかってしまうのが…もどかしい。
私の言葉に顔を上げた焦凍は
何も言わず口端を上げるだけだった。
「わかってる
『待て』でしょ?」
「悪ぃ。」
細められた瞳には「悪い」なんて露ほどもない
むしろ悪戯でも仕掛けているかのような…
ねぇ
納得出来る?
普通さ
この状況で納得できる女の子なんて居る?
理解はした
だけどそれは理解だけで
心のもやの色は薄れども
晴れてくれない
上手いこと躱されて
情事を終えた今
思い返してみると良いように言い包められた
そんな気しか……
「お前が不安になる事なんざねぇ。」
近づいた瞳は意地悪に細められた
長い眉毛と
二っと上がった口端
隠す事を隠す気
一切なし
はっきり言ってタチが悪い
こんなに堂々とされちゃ
疑う自分が小さく思えてくる
「はぁ…わかりました。」
あてつけがましい溜め息は盛大に
あるのは不安よりも不満だと
気持ちを込めて耳たぶを噛んだ
耳元をくすぐる笑い声は愉しそうだ
なんだか疑う事すら出来なくさせられてしまった。
(ずっるい!)
余裕の笑みを思いっきり睨みつけてはみたけれど
その瞳は笑みを湛えたまま閉じてしまう
そして一言だけ
「二人…か。」
チラと視線を逸らして笑みを苦笑に変えた。
もう…今日の焦凍は訳のわからない事ばっかりだ。