第41章 【深緑色】自己CHIYU
体育祭から
目を見張る速さで変わっていく
願望に
エゴに
心に素直に
まるで真っ白のキャンバスに
色が乗せられていくみてぇに
そこに描かれる絵画を
どんな言葉で表現すればいいだろうか
俺を見上げるハイリの切なげな表情に
笑みが漏れる
屹立していた熱の収まりを感じながら
一滴残らず白濁を流し込んだ。
息も切れ切れの身体から身を起こすと
冷めやらぬままの声音が耳をくすぐった。
「しょぉ…と…っ
まだ、も…ちょっとこのまま…。」
波が寄ったキャンバスに横たわる女は
背景込みで絵画の様だ
桃色に染まった肌に真紅の花びらが舞う
金色に光る髪
それが落とす青い影
柔らかな曲線が描く影は更に濃く
照らされる肌を淡く見せた。
伸びてくる白い指を
取らねぇワケがねぇ。
「あぁ…」
指を絡めただけで嬉しそうに細められた瞳は
淡い光の中で琥珀色に溶けた。
波打つ金糸が飾る
頬を
首筋を
乳白色に浮かび上がる極彩色を
目を細めて見やる
自然と上がった頬が音を成した。
「綺麗だ…。」
もう無意識に、だ
ベッドに貼り付けられたこの絵画を
どんな美術品よりも美しいと思う。
命が吹き込まれたかのような温度を
何よりも愛おしく思う。
伸びてきた細い指が頬に触れ
一度は凪いだ筈の瞳がまた揺れた
「離れちゃ、だめってば…」
目元を撫で
頬を撫で
首の後ろへと絡みついてくる
離れるなと言葉より強く訴えかけてくる
わかっちゃいるんだ
整理は付けども
納得できるはずがねぇ
どれ程大丈夫だと言おうが思おうが
あの女の事を話さねぇかぎり
ハイリはずっとこの調子……
「わかってる。」
不安になる必要なんざどこにもねぇ
今言うことに何の問題もねぇ
だが俺はわかってんだ
それじゃ根本的解決にはならねぇって事
身をもって知ってんだ。
柔らかな頬に掛かる髪を指先で払う
揺れる目元を撫で
彼女の不安ごと小さな身体を抱き締めた。