第41章 【深緑色】自己CHIYU
「安心しろ
どこまでも一緒に堕ちてやる…。」
だからもう、大丈夫なんだってば
瞳を閉じたままクスと笑う
唇の上で囁かれたソレが
最後に聞き取れた言葉らしい言葉だった。
奥を突いていたばかりの先端が
入り口付近を行き来する
焦らすように
遊ぶように
焦れた私はもっと欲しくて
ねだるように両腕を伸ばした
「ちゃんと、おく…っ」
クスと漏れ出た満足そうな笑み
YESもNOもなく私を見下ろしていた顔が近付いてくる
抱き込むように腕を背に回されると
ピタリ、肌が触れ合った。
どちらのかわからない熱と鼓動に
安心するの。
それが私を我儘にするの。
「ね、好きって言って…っ」
好きの代わりに深いキスをくれる
私が欲しいものをこの人はちゃんとわかってる。
遊んでいた先端が再び奥を擦りだして
こういう時の声って
抑えようとしてても出てしまうの
「やっ、あぁぁあっ…まって、やっ、ぁっ…っ」
激しく突かれるよりこっちの方が好きだってことも
彼は絶対わかってる
私より、私の事わかってる
その実感が欲しくて
私はこの時間を強請ったんだ。
(あつ、い…。)
抱きこまれながら仰け反った背に
奮える指先がシーツを掻いた。
キンと音がする
現実から飛んでしまうような耳鳴りの音
お互いの息遣いも
自分の声さえ無にしてしまうような
「しょ、とっ…ぁあっ、しょぉとっっ!」
もう、この人は私の一部だ
ううん
私がこの人の一部なのかもしれない
薄らと開いた視界で糸が見えた気がした
運命の糸なんて可愛らしいものじゃない
雁字搦めに絡まった真っ赤な糸
どっちがどっちを絡め取っているかなんてわからないくらい、その量はおびただしくて
水面に伸ばしていたその手まで
絡め取って引きずり込んでいくみたい
(――堕ちちゃう…。)
遠くで泣き叫ぶような声がする
その声が叫ぶのは私の大好きな人の名。
あぁ、自分の声かって
自分の愛叫に安堵しながら
白んだ世界で瞳を閉じた……。