第41章 【深緑色】自己CHIYU
「……もう、落ち着いたのか?」
「ん、もう大丈夫。」
それは合図
今日のまぐわいの合図
ねだる瞳はすぐ側に
細い指先が俺の唇を伝う
いつも俺がやってる事だ
狭いベッドの上
俺に覆い被さる女の腰を掴み反転させる
ハイリは全て理解したかのように頬笑んだ
「ね、しょーと…」
「ん?」
大丈夫は終了の合図じゃねぇ
食欲が満たされりゃ
次に満たすもんなんざ決まってる
「キスして…?」
さぁ、今度は俺の番だ
耳を食めば耳を食まれ
頬にキスをすれば同じように返される
やまびこの様なラリーはきっと
私達の無言の会話だ
言葉でなく行動で
互いの想いを確かめ合う
人よりもっと原始的な
グルーミング
どんな愛の言葉よりも
欲のままに喰らう事よりも
(満たされる――…)
どれ位そんな時間を過ごしていただろうか
じゃれ合いのような時間が
フレームが切り替わったかのように
色濃くなる
シャツはもう、その役目を果たすことなく
スカートはたくし上げられ
そんな姿のまま横たえられた私は
きっと目を覆いたくなる程はしたない姿なのだと思う。
「明るいとこで見んのも良いな。」
「あんま…みないで、っ」
私を見下ろす瞳が伏せられる
腰を掴む手に力が込められた途端
その表情は蠱惑的になった
薄い唇が弧を描く
背に光を受けたその姿はとても綺麗で
「無理だ、どんだけ見ても足りねぇ…。」
思わず手を伸ばした
頬を撫でたくて
互いに互いへと手を伸ばす
本当に絡まり合った人形みたいだ
筋ばった手が胸に触れるだけで背が伸びてしまう
鼻から抜けるような甘えた声が出てしまう
「…ぅん…ぁあっ!」
今日の私はどうしたのだろう
先端をグニグニと抓まれて
身体が波打った
もう奮えなんてレベルじゃない
全身が性感帯になったみたいに
触れられた場所から熱くなっていく
気持ちも躰も昂っているはずなのに
今の私に似合うのは真逆の物ばかり
――オチル、シズム、オボレル……
まるで深海から淡く見える水面に手を伸ばす
そんな心地で白い髪を梳いた
言葉が
零れる
「こわい…」
このまま堕ちていくのが怖い
快楽に沈んでしまうのが怖い
焦凍に溺れてしまうのが……
――コワイ