第40章 【深緑色】secret cancer
――ウタガッテル…?
違う
気になってるだけ
目が覚めて
あの子が現れてから
ずっと気になっていたの
話しながら
笑いながら
考えてたの
いつも女の子たちに関心を示さない焦凍が
彼女に“だけ”は違った
『戻ンのか?』
そう言った
まだここに居て欲しい
そう聞こえた
そう解釈してしまった
なんだかそこには
私の知らない世界があるみたいで
そこに何かの特別を感じてしまって
――ナンデ カノジョ ダケッテ…?
そう、思ってしまったの。
誰にでも愛想が良いなら
きっとここまでなかった
クラスメイトにだって
この人は滅多に笑みを見せない
体育祭を経て変わった?
今後は誰にでもそうなるのカモ
その可能性だってある
――マッテ ヨク、カンガエテ?
お願いだから誘導しないで
いくら考えても同じ
仮に彼女だけだったとして
たったそれだけで
この感情を抱くのは無理がある
だってこれだけで…なんて
いくらなんでも酷いでしょ?
――コノ カンジョウ ハ?
この胸を占める感情の名が
わからない程私は純粋じゃない
だけど認めたくないの
そんな子ではありたくない
客観的に見ればそう思うのに
主観的感情がそれを覆ってく
――モウ、ミトメテル デショウ?
知らないフリ
見ないフリ
(だってここは誇るとこ!でしょ?
ね、ひざしくん…)
心の中で大好きなお兄ちゃんに問うけれど
響く声はあの快活な大音ボイスじゃなくて
少し歪んだ女の声だった
――コレハ ホコル トコロナノ?
頭の中の知らない私
なんて言わない
知ってる声だ
生きて来て一番聞いてきた声
――ホラ ミトメヨウヨ
どっちも私の感情で
どっちも正直な思いなの
きっとね
こういう事思うのって
良くない事だと思うんだ
――イツマデ イイコノフリ スルノ?
そう、だよね
いい子じゃないんだよ私
それが出来る程
心が出来上がってないの
――ガンボウ ガ アフレダス
喉に
舌に
言葉に
「ねぇ焦凍……」
あぁ…「ない」なんて
ゼンブ ウソダ。