第40章 【深緑色】secret cancer
竦んだ足を叩いて学校に行っていた
皆優しかった
優しくて優しすぎて
優しいのに寂しかった
どうして寂しいのかわからなくて
言葉の上の矛盾はいつまでも解決しなくて
導き出された答えは
“私が捻くれてるから”
差し伸べられた手は
取ることは出来ても握り返す事は出来なかった。
「なァに笑ってやがんだ?」
「いや、同じ目線だなって思ったら
可笑しくてっ…。」
「あ"? テメェが寝てっから
わざわざ屈んでやってんだろーがよッ。」
今、目の前に迫る仏頂面は呆れてる
腰を曲げて目線を同じ高さに
どうやら爆豪くんは
私の言葉を物理的に受け取ったらしい
そうだね、確かにそれも同じ目線だ
「違う違う、そっちの意味じゃなくてっ…。」
「あ"ぁッ!?」
「すぐ怒る…
大体怒りの沸点が低すぎなのよ君は!」
ほんとにね
最近までわからなかったの
「コイツ程じゃねぇわッ!」
「いやいやいやいや止めて
焦凍はそんな事ないもん!」
「あ”ァッ!?」
「ほらすぐ怒るーー…。」
親指で焦凍を指しながら
物凄い剣幕で睨んでくる
こんな空気に安心する
安心して初めてわかった
対等でありたかったの
上でも下でもない
同じ目線でいたかったの
『一つ下の者』
そんな態度は
例え私じゃなくても
多感な子供ならすぐ気付く
慈悲のような優しさに
あくまで一段下の者への優しさに
私は寂しさを覚えていたんだって。
(なんだ、解決したら簡単な話だった)
特異が嫌だった
特別も嫌だった
雄英に入って
隠す必要のない場所が出来て
でも今度は同情が絶えなくて
(あれは消太くんのせいなんだけどね…)
大して努力もしてない私がヒーロー科に編入する事
そこに不満を抱いたのは爆豪くんだけだった。
(だから私
爆豪くんにだけ遠慮しないのか…。)
フッと息が漏れた
一気に解決して力が抜ける音
原因さえ分かれば
紐を解くのはとても簡単
もしかしたらもう解く必要もないかもしれない
だってもう
ヒーロー科の生徒だから
皆と同じように扱って欲しいの
特別なんていらないの
勿論
この人を除いて…だけど