第40章 【深緑色】secret cancer
「3年の授業に出るらしい
少し空けるつってたぞ。」
「そっか…午後、始まってるのね。
二人ともサボっちゃダメだよ…。」
ハハと苦笑を零すこの女が
誰よりも寂しがり屋だという事を知っている
俺達を見てホッと息をついたこの女が
温もりを渇望してやまない事を知っている
俺だけでは埋められねぇその温もりは
「ンだと…?
大体テメェが立ったまま寝ンのがワリィんだろーがッ!」
「そうならないように寝ようと思ったのに
無理矢理引きずって食堂に連れてったのはそっちでしょ!」
恐らくこんな会話が出来る相手…
とりわけその件について
話した事があるわけでもない
だが言葉の端々に滲むものがある
『爆豪くんとなら喧嘩できるかも…』
喧嘩をしている子供を見てぽつりと零す
バカ騒ぎをしている中学生を見てまた零す
喧嘩がしてぇのか
だからと言ってしようと思って出来るモンでもねぇ
俺では与えたくても与えらんねぇ存在
小・中と大人の囲いの中で生きてきたハイリは
同年代の“友だち”に飢えてんだ、と。
(俺にはわかんねぇ感情だがな…。)
一人を好む俺じゃ
理解すら難しい
だが間違いなく…
「それにしたって一言くれぇあっても良いがろーがッ!」
「大事な話したかったんだもん!」
「あ"?
ありゃただの惚気だろうがよッ!」
味気のねぇ背景に
似たような色味の頭が二つ
睨みあっていがみ合う
バッと上げられた手に翻った
これまた同じ色味のカーテン
二人の口論を煽る様にヒラと踊る
(イキイキしてんな…。)
こんな会話を
楽しんでんだろう
吊り上がった亜麻色の瞳は
寝起きだっていうのに爛々と輝いている
まるで真夜中の猫みてぇだ
ウチのクラスにゃ
俺を除いて19人も居るってのに
そこに一番当てはまってんのが
爆豪って所は気に入らねぇが
ハイリにとって大切なお友達である爆豪は
俺には埋められねぇピースの一つっつーワケで
総じて
(厄介だな……。)
この一言に尽きる。