第39章 ♦番外編♦ はにーホリック
耳をつんざく悲鳴は何重にもエコーがかかって響いてきた
次第に聞こえる足音は一つや二つじゃねぇ
麗日に無理矢理渡された包みを持ったまま足は廊下へ
薄暗いのは敢えて落とされた照明の為か
迫りくる影は蠢いて見える
大勢の黒い影に追われているのは
いつも仔犬のようにじゃれついてくる
………猫だった
(なんでもう着替えてんだ?)
そんな事はどうでも良い
肌出しすぎだろそれは
爆豪が付けてるのより小さな耳と
細く長い尾
チリンチリンと音を立てて駆けてくる
なんでさっきと髪型が違うのか?
実は違う奴なのか?
(ンなワケねぇだろ…。)
あんな可愛い奴が二人と居るわけねぇだろ
細い腕を俺へと伸ばし
助けを求めているのは間違いなく最愛の彼女
「焦凍、焦凍たすけてっ!」
ハロウィンてのはこんなに大勢に
追い掛け回されるイベントなのか?
さっきの説明には無かったはずだが…
その様例えるならエサに群がろうとする猛獣の軍勢
ひ弱なエサは
人目も振らず俺の胸へと飛び込んで来た
「しょーと…ッ」
半泣き状態のハイリを抱き止めて軍勢を見やる
一見性別不詳の奴もいるが…
軍勢は男ばかりだ
この学校にゃ男しかいねぇのかと問いたくなる程に
(菓子を貰えなかったから泣いてる
……って訳でもなさそうだ。)
なんで追いかけられてんのか
問わずともわかる
大きく上下する剥き出しの肩
惜しみなく晒されたデコルテライン
涙で滲んだ大きな瞳
上げ出したらキリがねぇ
ハイリの存在そのものに喉が鳴る
そりゃコイツがこんな格好してたら
「行くぞ…」
「ぅん………うん!?」
連れ去りたくもなるよな。