第39章 ♦番外編♦ はにーホリック
一体何時から始まったのかこのお祭りは
少なくとも私たちが生まれた頃には
すっかり日本でも慣れ親しんでしまっていた
ヨーロッパ発祥の仮装祭り
平日だろうが祝日だろうか関係ない
SNSはコスプレ写真で溢れ返っているし
街はカボチャのランタンや
お化けのカブで彩られてる
Trick or Treat!
魔法の呪文を唱えれば
いくらでもお菓子を貰えちゃう
そんな夢みたいな日だと思ってた
いや、それで間違いないのだけれど…
間違いないのだけれど!!
けれどまさか
まさかまさか
自分が仮装する日が来ようとは
今まではこんなもの着なくてもお菓子をくれてたのに!!
「なんなのよこれはっっ!!!」
猫耳カチューシャ
鈴付き首輪
長ーい尻尾の先にはリボン付き
白いフリルで縁取られたベアトップのワンピースは
パンプキンでもイメージしてるのだろうか
いくらシルエットが近しいミニスカートだろうが
大柄なストライプだろうが
こんな鮮やかなピンクと黒では
カボチャというより
(チェシャ猫……?)
ワンピースと同じカラーのニーハイソックスが
益々そう思わせた…。
「んーーー可愛い!
流石私のハイリッッ!」
場所は空き教室in雄英高校
時間は18時
我が国一のエリートヒーロー校は
この日この時間
ただのお化け屋敷になる
教師だけじゃなく生徒も
各々仮装やメイクを持ち寄って
日本一楽しんでしまう
日本一のエリート校は
遊び方も日本一でなければ
らしい…
(お化け、なんだよねこれも…化け猫かな?)
傾げた頭を結うのは
相も変わらず上機嫌なオネーサマ
「猫耳付けてるからツインテールにしましょうねッ!」
「はー…ぃ」
鏡はない
だけど見える
見開いた目を充血させて
フンカフンカと息を荒立てている
いつもは優しい姉の姿が……
(ねむりちゃんって
たまにこーゆーとこあるよね…。)
だけど
誰が逆らえようか
こんなにハロウィン一色に染まった校内で
一人制服なんて着てたら
それこそ本物のお化けに連れ去られちゃうかも
なーんて
本来日本にそんな風習はなかったハズなのだけど…