第38章 【深緑色】自 恋 魔
百面相だなコラ
こっち見ろや鈍感女
んなコト思っても
意味ねぇってのはこないだ痛感したばっかだ
周りがあれほど止めてた理由は
たかが一日で身に染みてきやがる
だがよ
そんなんで割り切れる感情じゃねぇ
忙しく鳴る心臓は正直だ
こればかりは鍛えようがねぇ
(これが俺の本音って事かよ)
開いた口は
せめてものあがきだろうか
ハイリの意識をこっちへと移すネタすら
あの野郎だ
「テメェ、話す気あんのかよ」
「聞く気あったの!?」
出そうになった苦笑は飲み込んだ
その通りだ
聞く気なんざねぇ
だがしょうがねぇだろ
お前が聞けっつーんだからよ
アホ面決めて頓狂な声を上げる
今日のハイリは俺からしてみりゃ
浮き沈みが激しい
認めたくねぇが認めるしかねぇ
気になってんだ
なんとかしてやりてぇと思ってんだ
例えそれが自分の願いと真逆の結果になろうとも
「テッッッメェが聞けっつったから
聞いてやってんだろーがよッッ!!」
「うあああ、ごめんってばごめん!」
ずっと引っかかっている朝の一件
あの映像がまざまざと浮かび上がる
くるくると回した桃色の傘
雨の中に咲く花の中での微笑みは
その色を反射して尚、暗かった
『キツくなったら言えっつってんだろーが。』
『なったらね、言うさ。』
キツくないと桃色の中で言った
本当にそうなら
今、こんな内容で
こんな顔で惚気るか……?
「でね、それでねっ――」
紅潮した頬には興奮が見える
身振り手振りもデカい上
こんなに目ぇ輝かせんのか
見た事のねぇ笑顔は
俺に向けられていようが
俺へのもんじゃねぇ
(救いようがねぇ…。)
怒りなんざとっくに通り越した
掴みようの無い感情の中
こんな様を見せられるとふと過ぎる
俺のやりてぇことは
この顔をぶち壊すことだって事実
こっちを向かせてやると決めた
その上で掻っ攫うと決めた
だってのにもう1つの感情が顔を出す
――ハイリを泣かすつもりなのか……?
最近、俺ン中は
廃墟で満たされた死街より荒んでやがる
デク
轟
原因は一つじゃねぇが
その大半を占めんのは
「ばくごーーーくんっってばっっ!!!」
間違いなく
この女だ