第38章 【深緑色】自 恋 魔
(だから、ここは誇るとこ!)
たぶん当時の私は
「ハイリは特別だ」
って言葉を期待してたんじゃないかな
貰ったらすごく嬉しかったと思う
でもヒーローって
誰か一人が独占するものじゃないから
ならば自慢しよう
誇りにしよう
(どうだ!
私の彼、素敵でしょ? なぁんてねっ!)
もしかしたらあれも
教育の一環だったのかも
今みたいな時の為の…
(なんか…笑えてきた。)
そりゃね
ひざしくんと焦凍じゃ抱く感情が違うし
独占欲の種類も違うし
その理屈だけじゃ
割り切れない感情ってある
あるさ!
あって何が悪い!
ただ
嫉妬というより
向けられる感情にトゲを感じて
近づきにくいと言いますか、なんと言いますか
(結構イマサラだしね。)
もともと人気あったし
モテない方がおかしいし
その上、体育祭であれだけ目立てば
そりゃこうもなる
そんな人に彼女がいて
独りじめしてるなら
(ま、面白くは――…ないよね。)
わからない、でもない
というかわかる
わかるから
飲み込もうと思えるの
自慢じゃないけど
飲み込むのは得意なんだ
(さて、どうやってこの場を離れようか…)
苦笑しながら逸らした視線
丁度教室に入るところだったお茶子ちゃんと目が合って手を上げる
ナイスタイミング!
お茶子ちゃんにくっついていって
この場を去っちゃおう
「お茶子ちゃ――…」
クラスメイトだし
女の子だし
別に不自然な離れ方じゃないし
焦凍が怒る要素なんて何処にもないと思うの
だけど
「ハイリ――…」
私の肩を掴んだ彼は
心底納得のいってない不満面だった。