第38章 【深緑色】自 恋 魔
(今度は5人組かぁい!)
A組の前からこちらへと駆けてくる
5人組の女の子
手を振りながら声を掛けるとこを見ると
初めてじゃないんだろうな
(朝のあの中にいた人たちかな?)
ぐるり焦凍を囲んで
彼の足を止める彼女たちは
まるで垣根の様
伝わって来る
「お前は邪魔だ」と
チラと寄せられた横目はあまりにも鋭くて
(ハハハ
あからさまだな…。)
頬を掻きながら
一瞬合った視線はすぐに逸らした
こんなのを見てると
つい思っちゃうんだよね
誰が付き添いで
誰が焦凍の事、好きな子なんだろう?って
全員とも?
本気なのかな?
ただのファンなのかな?
(………良いけどねっ!)
ヒーローを目指す相手に対して
嫉妬なんてしてたらキリがない
抱く感情はそんなものじゃない
もっと別のものであるべきだ
それを学んだのは小学生の時
教えてくれたのは
ひざしくん――プレゼント・マイクだった。
ヒーローだけに非ず
ラジオ番組までこなすあの人の知名度は
消太くんと違って昔から特別に高かった
プライベートだろうが街に出れば人の山
それを断りもせずファンサービスへと走るものだから
一人置いてけぼりをくらった私の台詞が
コレだ
『わたしのおにいちゃんなのにっ!』
今思えば独占欲だった
ひざしくんを取られちゃったら
一体誰が消太くんから守ってくれるのかって
結構焦ってたりもした
なのに返って来た台詞は
なんとも彼らしいモノで
『So cute!!
可愛いコト言うじゃねェかハイリ!!
だがなァ――……』
今でも忘れない
催眠術でもかけるかのように
チチチと振られた人差し指と
ニヤリと上がった右の頬
サングラスの向こう側から覗く
細められた瞳は自信に満ち溢れていた。
『……――ここは自慢する所だぜェ?』
幼い私はそのヒーローを
カッコイイと思ったんだ