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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第38章 【深緑色】自 恋 魔




他校に比べ
幾分賑やかな職員室も
流石に静かだった

情報に大小はあれど
知る人ぞ知る少女

希少な“治癒の個性”持ち

知らぬ振りを通しながら
意識だけをそちらに向ける教師は少なくない

故に

細やかな兄妹喧嘩が途切れると
室内に響き渡るのは無機質な機械音だけだ

徐々に開け放しの扉の向こう側から
小さくも賑やかな生徒たちの声が聞こえてくる

よくよく見れば生徒が一人
そこに佇んでいるではないか

先に気付いたのは兄の方だった


(轟……?)


ハイリの向こう側

その男子生徒は
扉に背を預けたまま腕を組み
静かな視線をこちらへ投げてくる

確認するまでもなく
目的はハイリだろう

全く
用心棒のつもりか


(虐めているようにも見える、か…)


相澤は二つ目の溜息をつき
目の前の少女を見据えた

コイツのナイトならぬヒーローは
とんだ過保護だ、と。


(人の事は言えねぇか…。)


用件は伝え済み
どちらにしろこれ以上引き止めるのは不合理だ

何より
こんな不満面をこれ以上見ていたら
理不尽に塗れたハイリに
自分まで同情してしまう


「わかったら教室に戻れ
迎えが来ている。」

「迎え……?」



相澤の胸中など露ほども知らぬ少女は
どうも話の流れについて来れていないようだ

キョトンと顔を上げて辺りを見回す

思い描いていた人物だったのだろう
その男子生徒を目に留めると
ぴょこんと瞳を上げる


「焦凍…!」


途端に様子はソワソワと

こちらの様子を伺い出す
バツの悪そうな横目

三度目のため息は
惜しみなく吐き出された


「いいから行け
プリントには目を通しておくように。」

「……っはい。」



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