第38章 【深緑色】自 恋 魔
結局誰も遅刻する事なく
とうとう始まったヒーロー科生活1日目
まさか初っ端から
こんな授業が待ち受けていようとは
「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」
「「「胸ふくらむヤツきたああああ!!」」」
皆ガッツポーズ決めてるけど
ワタシ、チョットムリ
なんたってついこの前まで
「ヒーローになりたくない」と
ごねていた人間なんだよ?
ヒーローになったらこんな名前にしたい…
なんて考えた事あるハズがない
そんなコト…先生が一番ご存知でしょう?
それなのにっっ!!
「…まぁ仮ではあるが
適当なもんは――……」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」
わざわざ
ミッドナイト先生を連れてくるなんて酷い
(ねむりちゃん……。)
大好きなお姉ちゃん
サボった授業のお詫びは
未だ直接お詫びを言えないまま
もう二週間以上経つ
後ろめたさを抱いている事まで
お見通しなんだろう
これは絶対、私に反発させないためだ
「この時の名が!
世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」
高いヒールをカツリと鳴らし
教室に入って来たその18禁ヒーローは
授業が始まった直後
見惚れてしまうくらいの
優美な笑顔を私へと向けた
「やっぱり思いつかない?
決めらんない様なら私が決めちゃうわよ?」
授業中に公私混同はしない
お詫びをするなら授業の後だ
なんて尤もらしいことを言ってはみるけれど
実のところ逃げてるだけだ
「そう簡単に思いつかないよ…。」
向けた苦笑は
少しだけ余所余所しい気がした
本当にお詫びする気があるなら
自分から会いに行けばいいだけの話
ねむりちゃんの自宅なら知ってるもん
体育祭の前だって、後だって
いくらでも時間はあった
「あんたに限っちゃ、昨日の今日だからねぇ…。」
私はただ
もしかしたら許して貰えないんじゃないか
って
それがただ怖くて
出方を伺っていたに過ぎない…
相手は大人の女の人
やっぱり甘えすぎてるのかな
「良いのよ
ハイリにはこれから頑張って貰う予定だから。」
頭の上に乗せられた女性の手
その手首に付けられた鎖がチャリと鳴る
掛けられた言葉はヒーロー名の事を指しているのか
それとも授業をすっぽかした事を指してるのか
考えてみたけれど
わからなかった。