第38章 【深緑色】自 恋 魔
「体育祭お疲れ様です!」
「学校まで一緒に行っても良いですか?」
「あの、良かったらこれ――…」
女の子たちのパワーってすごい…
何が起こっているか、だって?
(は、ハーレムだぁ……っ!!)
人人人!
しかもすべて女子!
もともと人気はあったけど
全国放送の体育祭を経たこの日
更に有名人になったらしい彼は
一組の女の子たちの声を皮切りに
あっと言う間に女子に囲まれてしまった。
「お、っと…」
当然のように人垣から弾きだされた私は
一人途方に暮れる…
置いてくべきか
待つべきか
このまま焦凍の側に居ると
厄介なことになり兼ねない
かと言って黙って去ると
それはそれで面倒だ
(学校まであとちょっとなんだけどな。)
カラフルな傘のど真ん中
一つ飛び出た紺色の傘
目は合ったものの
彼も身動きできないみたい
ドンマイ焦凍!
もし遅刻しちゃっても
先生にはちゃんと説明しておくからね!
『ラ イ ン す る』
口パクで伝えながら
スマホを掲げ指でさす
後は「先に行く」と送れば良し
この様子じゃ焦凍に限らず皆大変かも
弁明は全員分必要かな?
「焦凍でこれじゃ
一位の爆豪くんはもっと大変かも…。」
独り言は遠慮なく口に出した
きっと誰にも聞こえないだろうし
聞こえてても聴いてないだろうし
くるりと背を向けて、足を一歩
「お…?」
だけど
どうやら私の独り言を聴いてた観客は
いらっしゃったみたい
「何、一人でブツクサ言ってやがんだ
……KY女」
しかもご本人、ときた。
つい一昨日まで恋敵だと思っていた男の子
誤解していた私を全力でブッ潰すらしい男の子
「ば、爆豪くんおはよっ!
今日も眉間の皺、絶好調だね!」
「あ"ァ?
それ以外も絶好調だわクソがッ!」
意外に返しは可愛かった。
意外と言えばもう一つ
爆豪くんの周りに人だかりが出来ていない事
いくら眉間に皺が寄ってるからって
誰一人いないってのは流石に変だと思うの
「あれ?
爆豪くんの周りは――……」
「あの…爆豪くんっ…!」
考えた側から
被った声は女子のもの
あ、やっぱり?
そう思った瞬間だった
「あ"?
話しかけんじゃねぇッモブ女がッ!!」
あ、なるほど…そゆことね
ってね
思い直したの。