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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第38章 【深緑色】自 恋 魔




翌日、空は暗かった

隙間なく敷き詰められた暗雲から落ちてくる雨

頭が重いと空を見上げるハイリは
言葉の割に笑いながら傘を傾けていた。


「雨…すっごい、もう梅雨だね。」


スカートを揺らし向けた後ろ姿

寂し気に見えんのは天気が悪ぃから
時間の割に暗ぇから

傘に隠れていてもわかっちまう
その角度で
天を見上げてんだと


「濡れるぞ、ちゃんと傘させ。」


固定概念が強く働きすぎてるだけだろうか

昨日の今日じゃ
この鬱陶しい雨も
天と地を繋いでいるように見えちまう


「雨はー…嫌いじゃないの!」


振り返ったハイリは
いつもの笑顔だった

条件反射のように息をつく

くるくると傘を回しながら
鼻歌を歌っちゃいるが
頭が重いんじゃなかったのか?

雨が嫌いじゃねぇってのは
まんざら嘘でもないらしい

登校の道すがら
ハイリの口数はいつもより多かった。


「午後には止むらしいよ?
ヒーロー基礎学はグラウンドかな?
室内が良いなぁ。」


今日からハイリにとっての高校生活は変わる

ヒーロー志望として
ヒーロー科の生徒として

元から志望してた
俺やヒーロー科の奴らとは
また違う生活だ

胸ン中にあるのは
期待だけじゃねぇだろう


「多分外だ、残念だな。」


相槌を打ちながら
呑気に笑うハイリから空へと目を移す

幾筋もの雨糸は
その量を増していくばかりだ

母親の事
ヒーローを目指すと決めた事


「梅雨ちゃんは喜びそうだよね!」


俺が勝手に勘繰って
勝手に心配してんだ

心配させまいとしてるんじゃねぇ
素で笑っている

だからこそ
不安はぬぐい切れねぇ

どうにかして気分を切り替えねぇと
逆に心配されんのがオチだろう

特にアテもなく
辺りを見渡した。


「轟くんっ!」


俺の意識を止めたのは
ハイリとは違う声だ

見れば数人の女子生徒


「………?」


返事する間もなく駆け寄って来たソイツ等に

隣にいた筈のハイリは
瞬く間に人だかりの向こう側へ

確かに何か変化を、と思ったが
間違いなくこんなんじゃねぇ…。

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