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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第37章 【深緑色】欠陥症





――――――………










「そうかな、とは思ってたけど
焦凍ってお母さん似なんだね。」

「あぁ…。」

「お姉さんもそっくりだよね。」

「そうだな…。」

「優しそうな人だったなー…。」

「……………。」




行きと違って帰りは饒舌なもの
明らかに緩んだ頬
浮ついた足元
弾む声

機嫌が良いのは見て取れた


「どうしたの?ホッとした?」


生返事ばかり返す俺を覗きこむ
その瞳になんら疑心はねぇ

恐らく、自分が異なことを言った
その自覚すらねぇ

ならば知らねぇを通してやるべきか
ついた息は日の落ち始めた橙の陰に隠した。


「いや、行きとは大違いだな…。」

「まぁね!」


髪を撫でれば嬉しそうに瞳を閉じる
この表情に甘えてたんだろうか?

何をしてやるべきなのか
聞いたところで「もう充分」だと返ってくんのがオチだ

感傷的になっちまうのは
時間が時間だから

そうでも思わねぇと
また触れちゃいけねぇ部分に触れそうで
目を合わせない様にすんのに必死。

橙から紺色へと段を付けて染まった黄昏時の空
紫色に伸びた雲を目を細めて追う

なのに
そんな時に限って自分で持ってくるんだコイツは


「私、お墓参りに行きたくなったなー…お母さんの!」


流石「KY女」と呼ばれる女
痛ぇ話題に自ら飛び込んでいく

だがその頬はあまりに晴れやかで
オレンジに染まった辺りの色より更に鮮やかで


「焦凍と一緒に行きたい…紹介したい!」


腕が勝手に伸びた
気づいたら抱きしめていた

そう言う声が
あまりに無邪気で

橙よりも更に紅く染まった笑顔が
あまりに自然で


「ああ、俺も行きてぇ…。」

「いつにしよっか?
夏休み前が良いな…。」


前に一度
不用意に触れちまった母親の話題

あの時に思った

コイツから話してくれるまで
触れるべきじゃねぇと

だがこの時思っちまったんだ

仮にハイリから話し出したとしても
それは聞くべきことじゃねぇんじゃねぇかと

そっと蓋をして
鍵をかけておくべきモンなんじゃねぇかと

だが拒めなかった

あまりに楽しそうに
やれ期末の前だ、期末の後だ
はしゃいでるもんだからよ…。

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