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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第36章 【深緑色】華と蜂のマリアージュ




このまま
この華を手折ってしまっていいのだろうか

惑う轟の唇が少女の名を呼んだ


「っ…ハイリッ…」

「ぅ…ん?」


マンションの前
それもハイリ自身が住んでいるマンションだ
人通りの無い夜とは言え
自分でさえ躊躇する


「ここはヤベェだろ…」

「ん、だね…ンッ…」


言葉を、体温を触れ合わせながら
抵抗の意を見せてもきっと意味はない

思ったとおり
ハイリも言葉に頷いてはいるようだが
絡まる蔦が解かれる気配はなかった。

蜜を含む声を飲み込みながら
窘める言葉と裏腹に
腹の底に熱が集中していくのがわかる


(聞いちゃいねぇ、本当にハイリか?)


本当にどうしたと言うのだろうか
これではいつもと立場が逆

しかも自分はハイリと違って
この誘いを受けることに何の抵抗も…


(ねぇから困る。)


いやあるだろう
雄の牙を剥き始める自分を叱咤する

ここは外で遮る物も何もない
それどころか道路沿い

歩道に人は居なくとも
車道に自動車は行き交っている

例え一瞬だろうが
こんな彼女を人に見せたくなどない


「ハイリ…家に入ろう…な?」

「ん、もう帰るって言わない?」

「ああ、約束する。」


浅く、早く
息をつきながら懇願すれば
ハイリの口元の花弁をふわりと緩め
腕は絡めたままに身を離した

濡れた唇をなぞる舌
密度の濃い睫毛を上向けて
「やったぁ」と喉を差し出す

首にぶら下がりながら
長い髪をふわりと揺らすその姿

華奢な体に美麗な顔立ち
可憐な華のような少女

なのに何故こんなにも
蠱惑的に見えるのか


(もう抗えねぇ…)


意思を容易く攫われた


男の頭の中にある感情は
もう、如何にしてこの華を喰らうか
それのみだ


「じゃぁ…早く入ろ?」


とは言えこんな色香を放つ華を
喰らう事など出来るのだろうか

腕を引かれるままに付いていく

丁度開いたエレベーターは
わが身を喰わんと口を開けているかのようだ

震えが表皮を走った傍から凪いで行く
高揚する身体が起こす生理現象

手を引く華は
悪魔か
天使か


(こんな可愛い悪魔になら
取って喰われても構やしねぇ…。)


小さな箱の中で貪り合う
部屋までの距離はこんなに遠かったのかと
笑う男の口端から熱い息が漏れた。

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