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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第34章 【空色】傷跡のキセキ




「どうなっても知らねぇぞ。」


轟の一言が合図となったかのように
両雄は同時に構えた

一呼吸遅れて
止めんとしたステージ脇の教師も二人
各々の“個性”を発動する

二人の間に聳え立ったのは5枚のコンクリート壁

試合はもう中止だと言わんばかりに
審判の眠り香も漂い始める

しかしそんなもの
目に入る筈がなかった
香る筈がなかった

止まるわけがない
やっと思い出したのだから
やっとわかったのだから

やっと
果たせそうなのだから

素直に
意地を張らず

あの約束を…

轟が繰り出す氷の杭は
今までの荒々しい形状とは違い
表面はなだらかに
その先は真っ平だった

地を蹴った緑谷は
なるべく近くでと氷の上を滑るように跳んでいく

圧が風を刃に変える
緑谷の最後の衝撃波

呼ばれた名は
彼の耳に届いただろうか…


「緑谷」


向かい受けるは朱の鳥
大きな両翼を広げ
凍てた地をも昇華する

夜明けと共に鳴く鳥は
遮る壁をも突き破り
迫る風ごと巻き込んだ


「ありがとな」




――WHAKOOOOM‼‼‼




プロヒーローセメントスの作り出した壁だ
間違いなく強度は高いはずだ

だがその防護壁は両側からの衝撃に悲鳴を上げ
そぼろのごとく粉々に

散々冷やされた空気が瞬間的に熱され
スタジアム中を大爆風が襲った

掠れた轟の礼が好敵手の耳に届いたのかわからない
ただ轟音の波に飲まれゆく


だが
彼女には聞こえたのかもしれない


荒れ狂う熱風、皆が目を覆う中
スタンドに目を細めて座る少女が一人
唇をかみしめて柔らかに目じりを下げる

そこに滲み、風に攫われた雫はきっと
轟と同じ温度なのだろう。


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