• テキストサイズ

【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第34章 【空色】傷跡のキセキ







――いつの間にか、忘れてしまった……






ユラと揺らめいた若火は
瞬く間もなく焱炎へと形を変えた。

煌々と燃え盛る朱には
豪華絢爛という言葉がよく似合う

真朱から銀朱へのグラデーション
揺らめく度に色調を変える

伝説の神鳥の誕生を思わせるその朱に
会場は熱に包まれた

轟の左側の“個性”
父から継いだ“個性”
戦いにおいて絶対使わないと言っていた“個性”


炎熱


上がる温度が
凍てついた右側を溶かす

双眸に緑谷を映す轟の耳に
雄叫びに近い声援を上げる
父の声など入りなどしなかった

この声だけじゃない
今まで記憶の中を巡り巡って
耳について離れることはなかった父の声が
その姿までもが


この時は晴れていた

抱く思いはただ一つ




――俺だって、ヒーローに…




溶けた氷が一筋
轟の頬を伝い落ちていった




























最も近くで熱風に煽られた男は
もう握る事すら困難な拳を握りしめた

僅かに震えた拳は武者震いか

この男もまたNo.1ヒーローを志す者

自分で焚き付けておきながら
壮観だとも言うべき光景に
引きつる口は自ずと笑みを作る

言葉はひとりでに漏れた




「凄…」

「何笑ってんだよ」




炎を纏う左手で拭われたオッドアイ
真っ直ぐに向けられた憑き物が取れたような瞳

間違いなく初めてだ

今初めて
轟の視野に収まった

実感した緑谷は喉を鳴らす

今まで見据えられていたのは自分じゃない
その向こう側の更に奥にある父の影

その証拠に
自分に向けられた二色の視線には
暗も冷もなく

いつも凍てついている轟の声音は
どこか柔らに感じた


「その怪我で…この状況でお前…
イカレてるよ。」

/ 804ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp