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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第34章 【空色】傷跡のキセキ




ハイリの言葉の意味がわからなかった

何を伝えようとしていたのか
言葉の向こう側がわからなかった
だから
ただ安心させたくて頷いた




ハイリの言葉の意味がわからなかった

元から謎かけの様な事ばかり言う女だし
アイツの言葉が俺に害をもたらすとも思えねぇ

いつかはわかんだろ
意味のねぇ事は言わない奴だから

そう思って深く問う事はしなかった




ハイリの言葉の意味がわからなかった

あんなに必死に伝えようとしてたのに
向き合う事に恐怖した

遠回しな表現は間違いなくオブラートで
それが破れちまったら
何かが崩れるんじゃねぇか

その先にあるもんが
幸か不幸かそれすら不確かだったってのに




ハイリの言葉の意味が

わからなかった

それが

今―――









『素直で居る事!
意地を張らない事!』









ここに居るはずのねぇ瞳に
覗きこまれた気がした

ここにねぇ温もりに
頭を撫でられた気がした

アイツは、こうなる事に気付いていたんだろうか
一体あの亜麻色の瞳にはどこまで見えてんだ?


(敵わねぇ…な。)


頭が抵抗を止めた途端
端々にあった記憶の土手が崩されていく

塞き止められていたものが
波音を立てて流れ込んでくる

いつの間にか、忘れてしまった記憶



『でも、ヒーローにはなりたいんでしょう?
いいのよおまえは
血に囚われることにことなんかない。』



夢にまで見たってのに
どっかに塞き止められていた母の記憶



『なりたい自分に、なっていいんだよ。』




声は間違いなくお母さんのもんだったのに
可笑しなことに
過ぎった笑顔はハイリのものだった

出会ったあの夜の柔らかな笑顔


(どおりで、惹かれたワケだ…。)


視界は
滲んでいた

目の前の緑谷の輪郭はぼやけ
形すら曖昧だ
なのに
初めてその姿をはっきりと捉えた気すらした

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