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【ヒロアカ】UAシンドローム【轟焦凍R18】

第34章 【空色】傷跡のキセキ




狂った回路が呼び起こす

ふと過ぎった
いつかの記憶の断片

夢にまで見た
母の記憶


『いいのよおまえは―――――……』


なのにこの先を
忘れてしまった…


「何のつもりだ……
全力? クソ親父に金でも握らされたか…?」


いや、違う
本当は―――……?
























轟の猛進は何かを振り払うように見えた
見守る亜麻色が僅かに目を伏せる

やはり無理なのだろうかと
苦笑を添えて

自己都合の他力本願だ
それ以前に留めて然るべきだ

それでもその亜麻色の瞳は
1フレームも見逃さないように
瞬きすら惜しんでいた

そんなハイリの横顔に
気付いたクラスメイトが一人

何か言わんと口を開く

だが何も言わぬまま
その口を閉ざし、ハイリの視線の先
ステージへと目を向けた。

重傷の域を超えてしまった緑谷
彼の姿を見るだけで胸を痛めていることだろう

なんせ対戦相手は彼女の恋人だ
ハイリどころか轟だって悪くは無い
それでも緑谷の怪我に胸を痛める


(そういう子よね…
でもどうしてかしら?)


隣に座る蛙吹は人差し指を顎に添え
頭を30度だけ傾けた。

見せない方が良いのではないだろうか
このままでは泣いてしまうのではないだろうか

そう思って掛けようとした声

だが出来なかった
その横顔に阻まれて

決して泣かないだろう
誰が目を逸らそうと
この子だけは決して目を逸らしはしないだろう

そう思わされた


『モロだぁ――
生々しいの入ったぁ!!』


実況が告げる戦況
ここに来て緑谷が轟の腹へと一発入れた

“個性”を使ったのだろう
打たれた轟は宙を舞い
セメントの上を跳ねその身はライン際まで

だがダメージを負ったのは緑谷もだ

殴った右腕が悲鳴を上げているのは
彼の様子を見れば一目瞭然

依然として劣勢は緑谷だ

蛙吹の視線は再びハイリへ


(ハイリちゃんは何を見ているのかしら…?)


何故
こんなにも縋る様な目をしているのだろうか

同じ試合を見ているハズなのに
ハイリの瞳はもっと先を見据えている

そう思えてならない。

握りしめられた拳が小さく震えている
やはり声をかけるべきかもしれない

だが出来なかった
ハイリの表情がそうさせてはくれなかった。

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