第33章 【空色】バイタルチェック
ハイリの手を引いて
目的もなく歩く
後方に入らなかったのは
自分が何仕出かすかわからなかったから
わかってる、今更だ
ただ今は、抱き合うなんかしなくとも
安心できた。
この距離でも十分なんだ
もし触れちまったら
親父への怒りも何も消えちまいそうで
それが怖かった。
ようやく気が落ち着いて来た頃には
試合は次に移行していて
爆豪VS麗日
結果は目に見えていると思った。
「やるな、麗日。」
足を止めた場所は一般席
スタンド後方の壁に背を付けて
二人並んでステージを見下ろす
正直なところ助かった
他に注意を向ける先があるってのは
気が紛れて良い
今のコイツを直視すんのは
色々と毒だ
「そうでしょ?」
そう言うハイリは何故か我が物顔だ
コイツも同じ事考えてんだろうか
ステージから一ミリとも視線を外さねぇ
俺の方を見ようとしねぇ
ステージを見守る横顔は
どこか嬉しそうで
(麗日を応援してんだろうな…。
なんつーか、珍しい。)
基本平等に見る女だったハズだが
反応を見りゃ一目同然
僅かな疑問に話が途切れると
察したようにクスと笑う声
「お茶子ちゃん、さっき診察したんだけどさ
震えてたんだよ。
しょうがないよね、相手が爆豪くんだもん。」
ステージ上
爆豪に向かって突っ込んでいく麗日
爆破による迎撃にわが身を庇う事もせず再突進
その吠える姿はどう見たって
闇雲に突っ込んでいる
そう見える
なんど向かっていこうが
触れる前に爆破で吹っ飛ばされちまう
はっきり言って反射神経も身体能力もレベルが違う
実力差は歴然
次第に
飛ぶのは野次だ
「おい!! それでもヒーロー志望かよ!
そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放りだせよ!!」
一つ二つと嵩を増す
確かに、見てらんねぇ
いつものハイリなら尚更だ
だが、ハイリは
それに表情を変えることなく
野次を一喝する相澤先生の言葉にへらりと笑い
空を仰いだ
「でもね、彼女には彼女の目標があるの
身近になりたい姿があるんだって
それがあれなんだろうね」
ハイリの指さした先
俺らから見てもまだ上方
ステージに居る爆豪も
流石に気付いてねぇだろう
「そうだな」
そこにある
幾つもの砲弾に